Uber車の死亡事故、自動運転開発の“代償”なのか:事故直前の映像を警察が公開(3/3 ページ)
Uberの自動運転車が2018年3月18日(米国時間)に起こした、歩行者死亡事故。事故が起きた米アリゾナ州テンペの警察は、事故直前の映像を公開している。この事故は、自動運転車の安全性について、議論を加速させるきっかけとなりそうだ。
安全性への認識が欠けていた?
フランス・パリに拠点を置くAutoKabのCPO(最高製品責任者)を務めるCarlos Holguin氏は、「現行の道路規則では、自動運転車向けに完璧な安全性を確保することは難しいのではないか。安全性とは結局のところ、速度と危険性との間の妥協点を見いだすことにある」と指摘する。
同氏は、「今回問うべき問題点は、Uberやソフトウェアメーカー、アリゾナ州政府、アリゾナ州知事が、安全性に対する認識に欠けていたということの他、市民を実験台として利用することに執着しすぎたという点ではないだろうか。Uberだけに限らず、皆で一歩引くことにより、自動運転車に搭載されたソフトウェアが正確に機能しているかどうかを検討すべきだ」と主張する。
第三者機関による安全性試験の必要性
多くの技術者は、あらゆるセンサーを搭載することで、人間が運転する自動車よりも安全な自動運転車を実現できると主張する。だが、第三者機関による厳格な安全性試験を行うことなく、なぜ“安全”だと言い張れるのだろうか。
自動運転車の規制については、シリコンバレーのハイテク企業も、デトロイトの伝統的な自動車メーカーも、十分に議論できる準備が整っていない。これまでのところ、公的機関や政府は、自動運転車の安全性を民間企業に任せきりにしている面があった。さらに消費者も、安全性については自動車メーカーの言葉を信頼しているのが一般的だ。「FacebookやTwitterは基本的にプライバシーが守られている」と思っているのと同じような感覚だろう。
Holguin氏は、第三者機関による自動運転車のテストは、絶対に必要だと述べる。同氏は「航空輸送業界が始まったばかりの1920年代ではあるまいし、われわれは何世紀にもわたって交通安全を実践してきたという歴史がある」と主張し、「つまり、『自動運転車は新しい技術だから、時に致命的な事故を起こし得る』という主張は、交通面で実践されてきたベストプラクティスを実装していない言い訳としては、成り立たないのである」と続けた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自動運転技術の新たな競争を仕掛けたNVIDIA
NVIDIAが、自動運転車向けの最新SoC「DRIVE PX Pegasus」を発表した。1秒当たり320兆回の演算をこなす同チップの登場で、自動運転向けの演算性能をめぐる新たな競争が始まるかもしれない。 - 車載電装システム市場、2025年に35兆円規模へ
車載電装システムの世界市場は、2017年見込みの21兆円超に対し、2025年には35兆円規模となる見通しだ。電動化や自動運転など、地球環境あるいは安全にかかわるシステムの需要が拡大する。 - デンソー、自動運転の判断を担う新プロセッサ開発へ
デンソーは2017年8月8日、自動運転システムに向けた新しいプロセッサを開発する子会社を設立すると発表した。CPUやGPUといったプロセッサとは異なる新しいプロセッサを開発し、半導体IPとして広くライセンス販売する計画。 - Qualcomm買収を阻止した大統領令、戸惑いの声も
BroadcomによるQualcommの買収劇は、大統領令によって終止符を打たれた。業界の中には、今回の発令に対する戸惑いの声もある。 - 自動運転でFPGAの期待値高まる、ザイリンクスがデモ
ザイリンクスは、「第9回 国際カーエレクトロニクス技術展」(2017年1月18〜20日、東京ビッグサイト)で、ディープラーニングを使った歩行者認識、IRカメラによるドライバーモニタリングシステム、Ethernet AVBを使った高速伝送のカメラシステムなど、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転向け技術をデモ展示した。 - NVIDIAのAI技術、Uberが自動運転車に採用へ
NVIDIAは「CES 2018」のプレスカンファレンスで、Uber Technologiesの自動運転車に同社のAI(人工知能)技術が採用されると発表した。自動運転分野におけるNVIDIAの快進撃は止まらないようだ。