ルネサス、28nmフラッシュ内蔵マイコンを出荷:処理性能は最高9600MIPS
ルネサス エレクトロニクスは、28nmプロセス技術を用いたフラッシュメモリ内蔵の車載制御マイコンを開発し、サンプル出荷を始めた。次世代エコカーや自動運転車などに向ける。
次世代エコカーや自動運転車に対応
ルネサス エレクトロニクスは2018年3月、28nmプロセス技術を用いたフラッシュメモリ内蔵の車載制御マイコン「RH850/E2xシリーズ」を開発しサンプル出荷を始めると発表した。次世代エコカーや自動運転車に向けた製品で、極めて高い性能と安全性を実現しつつ、OTA(Over The Air)機能にも対応した。
RH850/E2xシリーズは、動作周波数が400MHzのCPUを最大6コア搭載し、9600MIPSの処理性能を達成している。電力性能比は40nmプロセス製品に比べ、同一電力で約3倍の性能を実現した。高い精度で車載制御を行うためのセンサーインタフェースを強化することで、車載制御の高度な統合も可能とした。
無線通信を利用して、ECUに実装されたソフトウェアを最新バージョンに更新できるOTA機能に対応した。マイコンには最大16Mバイトのフラッシュメモリを実装している。記憶容量が大きいため、プログラム実行中でも任意のメモリ領域のみを更新することができる。さらに、最大10チャネルのCAN FDやイーサネットを始め、Evita Mediumに対応したセキュリティ機能を搭載することで、安全かつ短時間でプログラムのアップデートを可能とした。
自動運転に向けて機能安全も強化した。車載向け機能安全規格「ISO 26262」のASIL Dをターゲットにしており、2個のCPUコアを用い演算の同一性を担保するデュアルコアロックステップ方式のCPU構成を最大4セット搭載した。これ以外にもハードウェアの安全機構が強化した。これにより、システムに誤動作や故障が生じた場合でも、不具合を迅速に検知し、安全な運転を確保することができるという。
同社は、40nmプロセス技術を用いたフラッシュメモリ内蔵の車載制御マイコン「RH850E2M」も同時に発表し、サンプル出荷を始めた。動作周波数が400MHzのCPUを最大2コア搭載し、フラッシュメモリの容量は最大8Mバイトである。
なお、同社は2105年2月に28nmフラッシュメモリ技術を開発し、2016年9月にはTSMCと28nmマイコン開発で協業した。既に、16/14nm世代以降のマイコンに向けたFin構造のMONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)フラッシュメモリを開発し、大規模動作に成功しているという。
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