イノベーション創出のために、政界と財界は何を目指す:小泉進次郎氏が語る(2/2 ページ)
新経済連盟(新経連)は2018年4月11日、都内で「新経済サミット2018」を開催し、衆議院議員の小泉進次郎氏によるトークセッション「政界×経済界のあり方にイノベーションを」を行った。本稿では、セッションの内容を紹介する。
テクノロジーのさらなる理解が社会課題の解決につながる
小泉氏は、テクノロジーが関心事項の1つであるといい、「今までの政治家とミレニアル世代の政治家の違いの1つに、政治家として理解しておかなければならない知識にテクノロジーが入った」とする。
続けて小泉氏は「詳しい細部のところまでは分からないが、できる限りAI(人工知能)サービスを提供している企業に出向いてサービス内容や研究開発などについて話を聞いている。これによって、今までの政治による社会課題の解決手段が法律や規制がメインだったものが、これからはテクノロジーで社会課題を解決するという発想を同時に持てている」とし、社会を前に進めていきたいと思うプレイヤーにはテクノロジーが「必須分野」(小泉氏)だと語った。
経済界はもっと政界に外圧を掛けるべき
また、小泉氏は新経連に対して「お願いしたいことは、政治の世界に外圧を掛けること」と指摘。特に、政府が今国会での成立を目指す働き方改革関連法案に関して経済界からの意見が少ないことを問題視し、「働き方改革が全くできていない政治と行政から言われて、なぜ(経済界は)黙っているのか」と小泉氏らしい言い回しを披露する。
さらに、経済界が2017年11月に待機児童対策費として3000億円を負担する決定を行ったことに小泉氏は言及し、「なぜ官邸から3000億円を出せといわれて出すのか。(決定を行ったのは日本経済団体連合会だが、新経連加盟企業を含め日本全ての企業が負担する問題で)これを新経連に話すと『え、そうなんですか? 』と(新経連は)知らない(様子だった)。おかしいと思わないのか」と厳しく批判する。
現在の日本は「政治は経済界の業界横ならびになる範囲でしか改革をやらない。経済界はアベノミクスで重厚長大産業がもうかっているし、あんまり(政界に意見を)いうといじめられるし黙っていよう」(小泉氏)という状況になっているとして、「今の政界と経済界の関係が続く限り、日本からイノベーションが生まれるはずがない」と断言した。
辻氏は、働き方改革に関する提言を盛り込んだ新経連の政策提言「Japan Ahead2」を紹介し、政界に対する戦略提案を行うとした。
“Day 1”の意思でどういう時代を作るか
セッションの終盤、小泉氏は米AmazonのCEOであるJeff Bezos氏の言葉“Day 1”を引用。「2019年に平成が終わり、新しい元号が来る時を日本のDay 1だと思っている」として、「平成が始まった頃は、平成という時代をどのような時代にするかという意思をあまり持たずに30年間やってきた。私が今思っていることは、次の元号を迎える時にその次の時代をどういう時代にするかという意思を持っていたい」と語った。
小泉氏は「新しい分野を作っていく。新しい民主主義を日本で、自分たちの自由や民主を語っていく。毎日がスタートアップの気持ちだね」とした。
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