気象庁新型スパコンを日立が構築、18PFLOPSを達成:気象予報が大きく便利に
日立製作所は2018年5月16日、気象庁に新スーパーコンピュータ(スパコン)システムを納入し、同年6月5日から稼働を開始すると発表した。同システムは、浮動小数点演算において理論上ピーク性能が約18PFLOPS(従来システム比約21倍)に達し、気象庁で用いられている数値予報プログラムを約10倍の速度で実行できるという。
日立製作所は2018年5月16日、気象庁に新スーパーコンピュータ(スパコン)システムを納入し、同年6月5日から稼働を開始すると発表した。同システムにより、気象庁の数値予報プログラムが従来システム比で約10倍高速化されるという。
Cray XC50を中核にシステムを構築
新システムは、中核となるスパコンに米Cray社が開発する「Cray XC50」を採用。計算ノードは主系、副系それぞれ2816台で構成され、主系と副系を合計した浮動小数点演算の理論ピーク性能は約18.166PFLOPS(従来システム比約21倍)に達する。
このスパコンの足回りとして、約10.6Pバイトの高速ストレージ、共用・大容量・長期保存ストレージ、ルーチン制御・運用監視機器、気象衛星により取得した気象データを入力する衛星関係機器が新システムを支える。主記憶容量は528Tバイトだ。
新システム稼働で気象予報の改善へ
新システムの稼働開始により、複数の面で気象予報が改善される。まず、詳細な降水分布を予測する「降水短時間予報」の予報時間が現在の6時間先から15時間先まで延長される。また、台風の強度予報(中心気圧や最大風速等)の予報期間を現在の3日先から5日先まで延長する。
さらに、2週間先までの気温予報について5日間平均の気温予測値を毎日発表する「2週間気温予報」を開始することや、静止気象衛星ひまわりによる観測データを用いた黄砂予測の高度化の実施を予定する。
気象庁は、上記以外にも「新しいスーパーコンピュータを活用し、各種気象情報の改善・充実に向けた取組を順次進める」と発表している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- PFNの新型スパコン、最新のNVIDIA製GPUを採用
Preferred Networks(PFN)は、最新のNVIDIA製GPUを搭載した次期プライベートスーパーコンピュータ「MN-1b」を2018年7月より稼働させる。 - スパコンの省エネ性能で東工大1位、産総研3位
東京工業大学(東工大)と産業技術総合研究所(産総研)がそれぞれ保有するスーパーコンピュータ(スパコン)は、省エネ性能の世界スパコンランキング「Green500 List」で1位と3位を獲得した。 - スパコンと気象レーダーで、ゲリラ豪雨を予測
理化学研究所(理研)らの国際共同研究グループは、「ゲリラ豪雨予測手法」を開発した。スーパーコンピュータ(スパコン)「京」とフェーズドアレイ気象レーダーを用い、実際のゲリラ豪雨の動きを詳細に再現することに成功した。 - Cray、AI向けクラスタスパコンを発表
Crayは、アクセラレーテッドクラスタスーパーコンピュータ「Cray CS-Storm」シリーズを発表した。1ノード当たり187TOPS、ディープマシンラーニングアプリケーション向けの標準ラックの場合2618TOPSと高い演算性能を実現する。 - IBM、5nmナノシートで画期的成果を発表
IBMなどが積層シリコンナノシートをベースにした新しいトランジスタ(シリコンナノシートトランジスタ)アーキテクチャを開発した。5nmノードの実現に向けて、FinFETに代わる技術として注目される。 - スパコン「京」がHPCGで世界第1位を獲得
理化学研究所と富士通は2016年11月16日、スーパーコンピュータ「京」が共役勾配法の処理速度の国際的ランキング「HPCG」(High Performance Conjugate Gradient)の最新版で世界第1位になったと発表した。