台湾、“アジアの虎”をはるかに超えた存在へ:中国からは恩恵も圧力も……(2/2 ページ)
台湾は、急速な経済成長によって、エコノミストが「アジアの虎」と好んで呼ぶ国の1つとなった。そして現在、同国は先端技術のエコシステムにおいて、これまで以上に中心的な役割を果たすようになっている。
台湾の現在の課題
台湾の現在の課題は、中国による支配への対抗策を見つけることと、中国以外の競合先を払いのけることである。中国はエレクトロニクスのサプライチェーンで強い影響力を持つようになったが、実はその“立役者”の1人が台湾だった。台湾や日本、欧米諸国が、巨額の資金や多くの専門知識を中国に投じたことによって、中国はエレクトロニクスの製造拠点に姿を変えた。
台湾にとって、中国は難問そのものだ。その爆発的な成長の恩恵を受けると同時に、その犠牲にもなっているからだ。
外部からの圧力に加えて、台湾の人口構成も問題視されている。出生率が比較的低く、人口における老年層の比率が高まっていることから、国際競争力が損なわれる恐れがあるからだ。台湾はそのようなハードルを懸命に克服しようとしているが、国際通貨基金(IMF)によると、アジア経済地域の他の国々も同様の問題に直面している。
IMFは、最近発表したレポートの中で「アジア経済地域の国々の多くは、高齢化に伴う生産性の伸びの鈍化を含め、重大な中期的課題に直面しており、構造改革が求められている。中には、構造改革に加えて、財政支援が必要な国もある。世界経済がますますデジタル化する中、一部の新しい技術には、真の変革をもたらす力があるが、同時に新たな課題を生み出してもいる。アジアは、デジタル革命の多くの側面で既にリーダーとなっているが、最先端にとどまり、技術的進歩から最大限の利益を得るには、情報通信技術、貿易、労働市場、教育といったさまざまな領域での政策対応が必要となる」と述べた。
台湾はこれまで、IMFが推奨する政策変更を積極的に実行してきた。恐らく、台湾が次のフェーズへと移行する中で期待できる最大の利益は、経済の弾力性だろう。加えて、TSMCのChang氏をはじめとする重鎮たちが、彼らの“資産”を新世代のビジネスリーダーへと確実につなげ、維持してもらうために、次世代の人材育成に意欲的に取り組もうとしていることも、台湾に大きな利益をもたらすはずだ。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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