ルネサスがモデルベース開発環境をバージョンアップ:マルチレート制御に対応
ルネサス エレクトロニクスは、車載制御用マルチコアマイコンのモデルベース開発環境「Embedded Target for RH850 Multicore」をバージョンアップし、複数の制御周期(マルチレート)を持つシステム開発に対応した。
複雑化するソフトウェア開発の負荷を軽減
ルネサス エレクトロニクスは2018年6月、車載制御用マルチコアマイコンのモデルベース開発環境「Embedded Target for RH850 Multicore」をアップデート、複数の制御周期(マルチレート)を持つシステム開発に対応する新バージョンを発表した。
マルチレート制御に対応した新バージョンは、自動車エンジン制御のような複数の周期を含むモデルであっても、マルチコア用コードを直接生成できるようにした。また、RH850向け統合開発環境「CS+」のオプションとして、サイクル精度シミュレーターを提供する。これにより、実機に近い精度で時間計測が可能となる。
これらを活用すれば、ソフトウェア開発の初期段階で実行性能を見積もることができる。検証結果をモデルにフィードバックすることも容易である。これらの特長から、システム開発の完成度を早期に高めることができ、複雑化するソフトウェアの開発期間短縮と負荷軽減を可能とした。
また、自動車制御システムのモデルベース開発を推進する団体「JMAAB」が、ガイドラインで推奨するいくつかのコントローラモデルの中から、Simulinkスケジューラーブロックを用意した。これにより、コア指定や同期をSimulinkモデルに表現し、RH850用のマルチコア向けコードを自動生成して確定的な動作を実現することができる。この他、複数のシステムを統合したECU全体の動作検証も可能だという。
新バージョンは、2018年秋に2コア搭載の「RH850/P1H-C」へ対応する予定である。最大6コア搭載した「RH850/E2x」シリーズにも順次対応する。さらに、車載用SoC「R-Car」ファミリーを含む「Renesas autonomy」プラットフォーム全体への展開、パートナー製モデルベース並列化ツールとの連携なども計画している。
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