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グラフェンナノリボンで不揮発性メモリ、東北大が開発フレキシブルで水中動作も可能

東北大学は2018年8月8日、原子オーダーの厚みを持つシート材料である「グラフェンナノリボン(GNR)」を用い、耐環境性に優れた新型メモリの開発に成功したと発表した。水中でも動作可能なフレキシブル不揮発性メモリなど、幅広い応用が期待できる技術としている。

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 東北大学は2018年8月8日、原子オーダーの厚みを持つシート材料である「グラフェンナノリボン(GNR)」を用い、耐環境性に優れた新型メモリの開発に成功したと発表した。水中でも動作可能なフレキシブル不揮発性メモリなど、幅広い応用が期待できる技術としている。

パーシステント光伝導の長時間持続を実現

 不揮発性メモリの新材料開発にあたり、「パーシステント光伝導(PPC)」という現象が注目されている。PPCは、光照射により伝導状態が変化し、光照射終了後もその状態が保持される特性であり、バルク3次元結晶で発現することが知られていた。近年、原子オーダーの厚みを持つフレキシブルな原子層シートにおいてもPPCの発現が報告され、フレキシブル不揮発性メモリの実現に大きな期待がかかっている。

 しかし、これまでの原子層シートを用いたPPCは、極低温下や表面に反応性ガスを吸着させた特殊な環境下でのみ発現が確認されているものや、大気環境下で動作するが変調情報の保持時間が数秒程度と短いものに限られていた。日常生活で利用可能なフレキシブル不揮発性メモリの実現には、耐環境性の向上と情報保持時間の長時間化が重要な課題となっている。

 そこで、同大学の加藤俊顕准教授らの研究グループは、原子層シートの中でも環境安定性に優れている半導体材料であるグラフェンナノリボン(GNR)に着目した。GNRは、炭素から構成される原子層物質で、幅がナノメートルオーダーの疑似1次元構造をとる。バンドギャップを持つ半導体特性を示すことから、半導体デバイス分野への応用が期待されている。


左:GNRの構造模式図 右上:GNRの合成手法 右下:合成されたGNRアレー(クリックで拡大) 出典:東北大学

 同研究グループは、これまでにGNRを精密に構造制御合成する手法を開発しており、大面積ウェハー上におけるGNRの集積化合成も実現したとする。今回、この高集積GNRデバイスに対して酸素プラズマ処理を行うことで、GNRデバイスにPPCが発現することを確認した。


左:本手法で合成したGNRアレーの走査型電子顕微鏡像と酸素プラズマによるGNR機能化に関する構造模式図。 右:GNRのPPC特性(クリックで拡大) 出典:東北大学

 このPPC特性は、真空中や大気中、水中でも安定に発現することが認められ、GNRが耐環境性に優れたフレキシブル不揮発性メモリに有望な材料であることが判明したとする。


左上:GNRアレー部に水を滴下した状態の光学写真 右上:水を滴下した状態の構造模式図 下:水を滴下した状態における電流の時間変化(クリックで拡大) 出典:東北大学

 さらに、変調情報の保持時間は、光照射終了後の72時間以上にわたって変調電流が維持されることが判明し、従来のPPCデバイスと比較して2万5000倍以上の維持時間を示すことが明らかになった。不揮発性メモリへの応用として必要な、書き込み、読み出し、消去の3動作にも対応し、同研究チームはGNRを不揮発性メモリとして動作実証に成功した。約4000本のGNRを集積化した「GNR−PPC不揮発性メモリ」の開発にも達成したとする。


GNR-PPC不揮発性メモリの光学写真と走査型電子顕微鏡像、各セルの光照射に伴う抵抗変化(ΔR)特性。(クリックで拡大) 出典:東北大学

動作原理の解明――酸素プラズマ照射がカギ

 同研究グループは、さらなる動作性能の向上を目的に動作原理の解明にも着手。その結果、酸素プラズマ照射によりGNR中に局所欠陥が導入され、GNRが接合しているNi電極の界面がNi(OH)2のナノ構造に変化することが明らかとなった。

 また、さまざまな電極種とGNR接合構造について実験を進めた結果、この形態のPPCは酸素プラズマを照射したGNR/Niデバイスにおいてのみ発現することを確認し、PPCの発現はGNR/Ni界面に形成されたキャリアトラップサイトにより誘発された可能性が高いという。

 同研究の応用デバイスとして、フレキシブル不揮発性メモリに加えて「光を照射した領域の情報が変化するという特性を利用し、ナノスケールスキャナーや生体センサー」(東北大学)などを挙げている。

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