連載
光変調器を駆動する高速CMOS回路の試作事例:福田昭のデバイス通信(164) imecが語る最新のシリコンフォトニクス技術(24)(2/2 ページ)
今回は、光変調器を高速で駆動する電気回路、すなわちシリコンCMOSのドライバ回路を試作した事例を説明する。
28nmのCMOS製造技術でドライバ回路を試作
実際に28nm世代のCMOS製造技術によってドライバ回路を試作し、シリコンフォトニクスのリング変調器を駆動させてみた。ドライバ回路のシリコンダイとリング変調器のシリコンダイは、2本のボンディングワイヤで接続している。
リング変調器のシリコンダイを載せたモジュールは光送信器となっている。レーザーの出力を光ファイバー経由で受信し、リング変調器によって変調をかけ、光ファイバー増幅器へと送信する。光ファイバー増幅器の出力を電気信号に変換してサンプリングオシロスコープで観測する。
CMOSドライバ回路には、パルスパターン発生器とマルチプレクサによって最大で56Gbpsの駆動信号を外部から入力する。
電源電圧1.1Vで50Gpbsの動作を確認
上記のようなセットアップで電源電圧を変化させ、NRZ符号のドライブ速度とビット当たりのエネルギー消費を比較してみた。電源電圧は0.9Vを標準電圧と想定し、標準電圧から高い電圧へと電源電圧を変更した。具体的には電源電圧が1.0Vの場合と、1.1Vの場合を試した。
その結果、電源電圧が0.9V(標準電圧)のときは、NRZ符号を36Gbpsでドライブできた。電源電圧を1.1Vに高めたときは、50Gbpsでドライブできるようになった。ただしビット当たりの消費エネルギーは増加した。
実験結果から、CMOSドライバ回路の製造技術を16nm/14nmのFinFET技術に微細化すれば、標準電圧でも56Gbpsでドライブできる見通しが得られたという。
28nm技術によって試作したCMOSドライバ回路でリング変調器を駆動したときの信号波形。左はCMOSドライバ回路の電源電圧が0.9Vのとき、中央は電源電圧が1.0Vのとき、右は電源電圧が1.1Vのとき。出典:imec(クリックで拡大)
(次回に続く)
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