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環境発電で“欠けていたピース”埋める、ルネサスのSOTB超低消費電流を実現したASSP(2/2 ページ)

ルネサス エレクトロニクスはドイツ・ミュンヘンで開催された「electronica 2018」(2018年11月13〜16日)で、エナジーハーベスト(環境発電)で得たエネルギーで駆動できる組み込みコントローラー「R7F0E」を発表した。核となるのはルネサス独自のプロセス技術「SOTB(Silicon On Thin Buried Oxide)」である。

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ルネサスが約20年にわたり開発してきたSOTBを解説

 ここで、R7F0Eの核となるSOTBについて、詳細を見てみたい。このSOTBによって、エナジーハーベストでも駆動できるほどの超低消費電力化を実現しているからだ。


「SOTB」の構造 出典:ルネサス エレクトロニクス(クリックで拡大)

 SOTBの基本構造は、上の図の通りである。ウエハー基板上の薄膜シリコン層の下に、薄い埋め込み酸化物絶縁層(Thin Buried Oxide Insulation Layer、以下BOX層)を形成した構造となっている。このBOX層(図版ではオレンジ色で示されている「Thin Buried Oxide」に当たる)は、厚みがわずか15nmと非常に薄い。一般的なFD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)では絶縁膜はもう少し厚くなる。

 SOTBプロセスでは、CMOSウエハーではなくSOIウエハーを使うが、この埋め込み酸化物絶縁膜が極めて薄いが故に、少し削ると容易にBOX層を取り除くことができ、隣にバルクCMOS構造を形成できる。それによって、同じチップ状にSOTBトランジスタとバルクCMOSトランジスタを形成できるのだ。ルネサスはこれを“ハイブリッド構造”と呼んでいる。


同じチップ上で、SOTBトランジスタとCMOSトランジスタを形成できる。BOX層が極めて薄いので、それほどの段差なく隣にCMOSトランジスタを形成できるのだ。守屋氏によるとBOX層を薄くするだけで約10年かかったという 出典:ルネサス エレクトロニクス(クリックで拡大)

 ハイブリッド構造により、3.3Vの電源電圧が必要なものはCMOS上に、それよりも低電圧(0.75V)で済むものはSOTB上に作ることができ、電力を効率よく使うことができる。例えば、RAMやデジタルIPはSOTB上に、フラッシュROMやアナログIPはバルクCMOS上に作り込んでいる。これによってアクティブ電流、スタンバイ電流ともに低く抑えることができるのだ。


プロセス別による消費電流の分布。SOTBは、アクティブ電流、スタンバイ電流ともに低いことが分かる 出典:ルネサス エレクトロニクス(クリックで拡大)

 R7F0Eは、ルネサスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で、300mmウエハーを使い65nmプロセスにて製造する。守屋氏によると、SOTBプロセスに最も適しているのは65〜55nmだという。FD-SOIが、28nm、22nmと微細化されているのとは対照的だ。配線が細くなり過ぎると、どうしてもリーク電流は増えてしまう。「SOTBプロセスではリーク電流も抑えたいので、せいぜい55nmプロセスが最小といったところ。それ以上、微細化すると28nmのFD-SOIなどと変わらなくなってしまう」(守屋氏)

 一方で、BluetoothなどRFの通信回路も作り込む場合は、線幅が細い方が向いている。そのため、将来的にはやはり55nmも必要になると守屋氏は考えている。

 ルネサスはSOTBデバイスについて、Phase 1〜Phase 3までロードマップを作成している。


SOTBコントローラーのロードマップ(クリックで拡大)

 守屋氏は、このロードマップに沿って進んでもSOTBの構造自体はもうそれほど変化しないだろうと述べる。基本的な構造よりも、SOTB側、CMOS側に何を作り込むかによる。先述したBluetooth通信回路を搭載する場合も、デジタルとアナログとに分けて搭載でき、消費電流を抑えることができるようになるのだ。

 一般的に、構造物のヘルスモニタリングや土壌のモニタリングなど、センシングをして間欠的にデータを送信するようなIoTのユースケースでは、使用するIoT機器は10〜20年は故障せず、バッテリー交換もないことが要求される。守屋氏はSOTBコントローラーについて、「半永久的に動作することを目指している」と述べた。

 守屋氏は、「普通のMCUの域を超え、いよいよSOTBコントローラーによって、本格的なエナジーハーベストの世界を作ることができると確信している。さらに、ルネサスだけでなく、他の多くの企業と協業しながら、積極的にエナジーハーベストの製品を市場に投入していけたらと考えている」と語った。

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