インフラ向けには別のCortexが必要、Armの「Neoverse」:AWSもプロセッサに採用
Armの日本法人アームは2018年12月6日、都内で開催した同社のカンファレンス「Arm Tech Symposia 2018」に合わせ、インフラ向けのプラットフォームである「Arm Neoverse(以下、Neoverse)」を日本のメディア向けに説明した。
Armの日本法人アームは2018年12月6日、都内で開催した同社のカンファレンス「Arm Tech Symposia 2018」に合わせ、インフラ向けのプラットフォームである「Arm Neoverse(以下、Neoverse)」を日本のメディア向けに説明した。
Neoverseは2018年10月に米国で開催された「Arm TechCon 2018」で既に発表されている。“プラットフォーム”とうたっているだけに、プロセッサコアIP(Intellectual Property)というわけではなく、コンパイラ技術やインターコネクト技術など、次世代インフラの実現に必要な周辺技術も合わせてIPとして提供する。
Armのインフラストラクチャー事業部門でシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるDrew Henry氏は、「10億個のセンサーが配置される世界では、毎月400エクサバイトのデータがインターネット上を流れている。トリリオン・センサー(1兆個のセンサーが使われる)の時代になれば、新たなインフラが必要になるのは確実だ。この領域こそ、Armが挑戦しようとしているところだ」と述べる。「トリリオン・センサーの時代では、4000万台ものサーバが同時に稼働する必要があるといわれている。4000万台というのは、現在世界で稼働しているサーバの台数の合計を上回る数だ」(Henry氏)
そこでArmが開発したのが、Neoverseだった。「当社は、Neoverseに巨額の投資をしていく」(Henry氏)
Neoverseの第1弾は、16nmプロセスを使う「Cosmos Platform」だ。ここではプロセッサコアとして「Cortex-A72/Cortex-A75」を用いている。以降、インフラの要件の変化に対応すべく、毎年アップデートを重ねていく予定だ。しかも、ファウンドリーの最先端プロセスを適用し、新しい世代になるごとに30%の性能アップを図っていくとする。2019年上半期には7nmを用いた「Ares Platform」、2020年には7nm+を用いた「Zeus Platform」、2021年には5nmを用いた「Poseidon Platform」のロードマップを公表している。ロードマップ通りに進むかはファウンドリーの技術開発によりけり、といったようにも見えるが、Henry氏は「数日前に台湾のTSMCを訪問した際、間違いなくこのロードマップを実現できるよう念を押してきた」と述べて、報道陣を笑わせた。
Henry氏によれば、今後ArmのCortexとしては、スマートフォン向けなど既存のCortexと、Neoverse向けのCortexと、2つのプロダクトラインができていくという。Henry氏は「これらのCortexでは、マイクロアーキテクチャは共有するが、特にNeoverse向けでは、将来のインフラに必要とされる機能、技術を搭載していくものになる」と続けた。
なお、AWS(Amazon Web Service)は同社の年次カンファレンス「re:Invent 2018」(2018年11月25〜30日、米国ネバダ州ラスベガス)において、Cosmos Platformをベースにしたサーバプロセッサ「Graviton」を発表。大きな話題となった。AWSがプロセッサを自社開発するということは、サーバのコストダウンが見込めるからだ。Henry氏は「このニュースを聞いた時は大変感激した」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Arm、「Neoverse」で再びサーバ市場を狙う
Armは2019年をメドに、パートナー企業との協業により、サーバやネットワーク、ストレージシステムなどに向けて最適化されたコアやIP(Intellectual Property)、SoC(System on Chip)などを発表していく予定だという。Arm MLプロセッサ、明らかになったその中身
2018年8月に開催された「Hot Chips 30」では、Armの「ML Processor(MLプロセッサ)」の中身が明らかになった。その詳細を解説する。Linux対応Armプロセッサ、利用がより簡単に
Armは、最新のエッジプロセッシングを搭載した組み込みIoT(モノのインターネット)デバイスの開発向けに、低価格で「Cortex-A5」ベースのLinux対応ASICを開発するための取り組みを発表した。Armが中国事業を合弁化、EUは中国に対し警笛
ソフトバンクは2018年6月、Armの中国事業部門の全株式の51%を、中国投資企業およびエコシステムパートナーに7億7520万米ドルで売却することにより、中国国内でArmの事業を展開するための合弁企業を設立すると発表した。これを受けてEUは、中国の法律が欧州企業の知的所有権を侵害しているとして、世界貿易機関(WTO)において訴訟を起こした。「Cortex-A76」でノートPC市場も狙う、Armの戦略
Armは2018年5月31日(米国時間)、新しいモバイル向けCPUコア「Cortex-A76」を発表した。同社によると、Intelの最新「Core」プロセッサ(開発コード名:Skylake)の9割に相当する性能を実現できるという。サーバ、スマホ、そしてIoTで高成長を維持! 電機/半導体業界2018年展望
新連載「大山聡の業界スコープ」。第1回は2018年のエレクトロニクス/半導体業界を占う。