FLOSFIA、「成膜」で高品質セラミックスを合成:サーミスターを半導体工程で作る
京都大学発のベンチャー企業であるFLOSFIA(フロスフィア)は、独自の成膜技術「ミストドライ法」を用いて、高品質のセラミックスを合成することに成功した。
高配向性で、表面凹凸が極めて小さい
京都大学発のベンチャー企業であるFLOSFIA(フロスフィア)は2019年1月、独自の成膜技術「ミストドライ法」を用いて、高品質のセラミックスを合成することに成功したと発表した。この技術を用い、小型で面実装タイプのサーミスター素子を試作した。
ミストドライ法とは、霧状にした原材料溶液と加熱部を用いて、酸化物薄膜を化学反応で作製する技術である。京都大学の藤田静雄教授らの研究グループが開発した「ミストCVD法」をベースに、FLOSFIAが「高配向性」で「高純度」「量産可能」な成膜技術に進化させた。
セラミックス部品の製造には、ペースト状の材料を焼き固める「焼結法」を用いるのが一般的だが、通常は1000℃を超える高温での活性化処理が必要になるなど、課題もあった。これに対してミストドライ法は、全ての工程を300〜800℃の温度に抑えることができる。この方法だと、一般的な半導体デバイスとセラミック部品の機能を1チップに集積することも可能になる。
FLOSFIAは既に、ミストドライ法を用いて、オン抵抗が極めて小さいショットキーバリアダイオードを開発している。今回は、この手法をセラミックス作製に適用した。この技術を用い、高配向膜で粒界が極めて少なく、表面凹凸や孔のない高品質のセラミックス薄膜を作製することに成功した。
同社は、ミストドライ法を用いてサーミスター素子を試作し、1×0.5mmの面実装パッケージに収めた。原子層レベルでセラミックスを順次、化学合成をすることができるため、薄膜化による低抵抗化、大電流化、センシング温度の感度向上、高周波特性の改善などにつながる可能性が高い。具体的には、抵抗値1Ω以下、周波数10GHz以上での安定動作などが期待できるという。
しかも、サーミスター素子は半導体製造プロセスを活用できるため、ロール状のフィルムへの形成、パワー半導体や光デバイス、ロジックICとの1チップ化など、さまざまな実装形態が可能となる。
FLOSFIAは今後、既存のデバイスメーカーやセラミックス部品メーカーと連携し、早期事業化を目指す考えだ。まずはセラミックス部品シリーズとしてサーミスター素子を製品化する。さらに、ウエハーやフィルムでの提供も含め、さまざまな電子デバイスや複合デバイスへの応用を目指す。早ければ2019年下期にもサンプル出荷を始め、2020年には量産に入る予定。2030年には売上高120億円を計画している。
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