Intelの創業7年目(1974年):出鼻をくじかれたクオーツ式腕時計事業:福田昭のデバイス通信(179) Intelの「始まり」を振り返る(12)(2/2 ページ)
引き続き、創業7年目である1974年の状況を紹介する。今回は、クオーツ式腕時計に関連する事業の活動を主に紹介する。
失策の責任を取って子会社Micromaの経営幹部を交代
子会社Micromaの失策に対する、親会社Intelの動きは素早かった。1974年7月には、Micromaの社長が交代する。Micromaの創業者で社長を務めていたRobert Robson氏は、社長を外れて取締役会の会長へと棚上げされる。代わって半導体メーカーのElectronic Arraysから、Richard D. Boucher氏を引き抜いてMicromaの社長に任命した。
また半導体メーカーであり、電子式卓上計算器とLED(発光ダイオード)ディスプレイ式腕時計のメーカーでもあるLitronixから、Irving Cooper氏をMicromaのマーケティング担当バイスプレジデントとして迎え入れた。さらに1974年12月には、IntelからMicromaに2人のマネージャーを転籍させ、それぞれ製造担当バイスプレジデントとエンジニアリング品質保証担当バイスプレジデントに任命することとした。
対照的に絶好調の時計用タイミングIC事業
期待外れだったMicromaの業績と対象的に絶好調だったのが、IntelのタイミングIC事業である。Intelがクオーツ式腕時計向けに開発したタイミングICは、1973年後半に発売された。このタイミングICは、Micromaを含めた外部の腕時計モジュールメーカーに広く販売された。
当時のクオーツ式腕時計市場は新規参入が相次いでおり、タイミングICは品不足に陥っていた。そこにIntelがCMOS技術による低消費電力のタイミングICを投入したところ、大好評を持って迎えられる。そして腕時計用タイミングICの市場ではわずかな期間で、Intelは大手のサプライヤーにのし上がった。
1974年にIntelはタイミングICの新製品を開発した。「時間」と「分」の表示に加え、「秒」と「日」の表示機能を追加した製品である。この製品もMicromaを含めた多くの時計モジュールメーカーに採用された。こうしてタイミングIC事業は、半導体事業の2本柱であるメモリ事業とマイクロプロセッサ事業に加わる、3本目の柱へと育っていく。
(次回に続く)
創業1年目 | 研究開発主体で売り上げは「ゼロ」 |
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創業2年目 | 初めての製品売り上げを計上するも赤字は拡大 |
創業3年目 | 売り上げが前年の11倍に急増して赤字が縮小 |
創業4年目 | 半導体メモリのトップベンダーに成長 |
最終損益が黒字に転換 | |
創業5年目 | 収入が前年の2.5倍に、初めての営業黒字を計上 |
腕時計メーカーになったIntel | |
創業6年目 | クリーンルームに防塵衣がまだなかった頃 |
創業7年目 | 「シリコン・サイクル」の登場 |
DRAMが「特殊なメモリ」だった理由 | |
パソコンを生み出した「8080」プロセッサが登場 | |
出鼻をくじかれたクオーツ式腕時計事業 | |
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