強磁性体合金の熱電性能、スピン揺らぎで向上:強磁性転移温度付近で効率2倍
物質・材料研究機構(NIMS)は日立製作所と協力し、強磁性体の合金で熱電性能が向上することを発見した。
高効率熱電材料、工場や自動車の廃熱利用などに期待
物質・材料研究機構(NIMS)は2019年3月、日立製作所と協力し強磁性体の合金で熱電性能が向上することを発見したと発表した。熱電性能の向上に「スピン揺らぎ」が関与していることも実験により明らかとなった。
NIMSを中心とする研究グループは今回、Fe(鉄)、V(バナジウム)、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)を含んだ弱い強磁性合金に注目した。作製した試料は、強磁性転移温度(Tc)が160K(−113℃)で弱い強磁性を示し、広い温度域で熱電性能の向上が見られたという。
特に、Tcが室温に近い場合、Tc付近では変換効率が20%以上改善されることを実験で確認した。Tcより高い温度域でもこうした効果を観測できたという。
研究グループは、合金組成を調整しTcを室温付近の285K(12℃)まで高めた試料を新たに作製し、熱電性能を測定した。この試料でも同様な効果を確認することができた。この時、ゼーベック係数は約50%も増加していたという。これを熱電変換効率に換算すると、従来の約2倍に相当することが分かった。この効果は室温以上でも持続し、熱電変換出力因子は、110℃で12μW/K2cmとなった。
強磁性体で熱電特性が向上する要因を実験的に調べた。この結果、熱を効率よく吸収して電子系のエネルギーに伝達する性質を持つ「スピン揺らぎ」が、電熱性能の向上に大きく関与していることが分かった。
熱電変換技術は、工場や自動車の廃熱利用、IoT(モノのインターネット)機器への電力供給など、さまざまな用途で注目されている。今回の成果について研究グループは、「高い効率の熱電材料設計に向けて、新たな指針につながる」とみている。
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