東北大学、高性能で低電力の不揮発マイコン開発:200MHz動作で平均電力50μW
東北大学は、エナジーハーベスティング(バッテリーフリー)で駆動可能な不揮発マイコンを開発した。
40nmCMOSと3Xnm MTJのプロセスを組み合わせ
東北大学は、エナジーハーベスティング(バッテリーフリー)で駆動可能な不揮発マイコンを開発した。最大動作周波数は200MHzと高い演算性能を維持しながら、平均消費電力は50μW以下に抑えた。
今回の研究成果は、東北大学省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンターおよび、国際集積エレクトロニクス研究開発センターでセンター長を務める遠藤哲郎教授、同大省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンターおよび、電気通信研究所の羽生貴弘教授、夏井雅典准教授らの研究グループによるものである。
開発した不揮発性マイコンは、40nmCMOSプロセスと国際集積エレクトロニクス研究開発センターで開発された3Xnm MTJ(磁気トンネル接合素子)プロセスなどを組み合わせることにより実現した。
集積回路の電力消費を削減するためには、パワーゲーティング技術などを用い、非動作部の消費電力を削減する方法が一般的である。ところが、電力供給を停止するために揮発性メモリを搭載したマイコンでは、内部情報を一時的に退避させたり復帰させたりする動作が必要であった。
研究グループは今回、スピントロニクス素子技術を用いて、搭載する全ての演算部を不揮発化した。これによって、パワーゲーティング技術を細かい粒度で適用することが可能となり、無駄となる電力消費を極めて小さく抑えることができた。また、センサーノードとして求められる信号処理を、高速に実行する再構成型演算モジュールの搭載や、演算部とメモリのデータ転送によるボトルネックを解消するなどして、高速処理を実現したという。
センサーノードの用途を想定して、一般的な間欠動作を行った場合の性能評価を行った。この結果、平均消費電力は47.14μWと小さく、少ない電力で動作可能なことを実証した。これまでに比べて、演算性能は2倍以上で消費電力は2桁以下を実現できることが分かった。
研究の成果は、半導体集積回路技術の国際会議「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference) 2019」(2019年2月17〜21日、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)で、その詳細を発表した。
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