連載
NANDフラッシュメモリのスケーリング論:福田昭のストレージ通信(139) 半導体メモリの技術動向を総ざらい(2)(2/2 ページ)
2018年8月に開催された「フラッシュメモリサミット」から、半導体メモリの技術動向に関する講演の内容を紹介するシリーズ。今回は、次世代メモリが期待される3つの理由のうち、スケーリング(微細化または高密度化)について解説する。
3D NANDフラッシュのビットコストは2023年には現在の4分の1に
3D NANDフラッシュメモリでは、積層するセルの数を増やすことによって記憶密度を高める。この数は、垂直に並べるセルトランジスタのワード線の積層数で表記することが多い。例えば、24個のセルトランジスタを垂直に並べた場合は、「24層」と表現する。この層数を24層から2倍の48層に増やせば、原理的にはメモリセルアレイの記憶密度は2倍に向上する。
現在のところ、ワード線の積層数では128層の3次元化技術と、1個のメモリセルに複数のビットを記憶する多値記憶技術では4ビット/セル(QLC)方式を組み合わせたフラッシュメモリが、商用化の秒読みに入っている。
将来も積層数を増やすことによるスケーリングは続く。西暦2023年には、記憶容量当たりの製造コスト(ビットコスト)は現在の4分の1にまで低下するというのがWebb氏の予測である。
現時点で、シリコンダイ当たりの最大記憶容量は1Tビットに、パッケージ当たりの最大記憶容量は1Tバイト〜2Tバイトに達している。ただし量産規模が最も多いのは、シリコンダイ当たりで256Gビットの3D NANDフラッシュである。
(次回に続く)
⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 現行世代メモリと次世代メモリの違い
フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」。最近のFMS(2018年8月に開催)で公表された情報の1つに、半導体市場調査会社MKW Venture Consulting, LLCでアナリストを務めるMark Webb氏が「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで述べた、半導体メモリの技術動向に関する講演がある。その内容が興味深かったので、講演の概要をシリーズでお届けする。 - HDD大手Seagateの四半期業績は前年比と前期比のいずれも減収減益に
ハードディスク装置(HDD)の大手ベンダーである米Western Digital(以降はWDと表記)と米Seagate Technology(以降はSeagateと表記)が、四半期の業績を相次いで公表した。発表日(現地時間)はWDが2019年1月24日、Seagateが2月4日である。そこで前回と今回は、WDとSeagateの四半期業績をご説明している。前回はWDの四半期業績をご説明した。今回はSeagateの四半期業績をご紹介する。 - HDD大手Western Digitalの四半期業績は2期連続の減収減益
今回は、Western Digital(WD)の四半期決算(2019会計年度第2四半期)について、まとめる。 - 半導体市場、本格的な減速が始まる
半導体業界は、ここ3年間連続で過去最高となる売上高を記録してきたが、広く予測されていたとおり、減速の兆しが見えてきたようだ。世界半導体市場統計(World Semiconductor Trade Statistics/WSTS)によると、2019年1月の半導体売上高は、四半期ベース、年間ベースの両方において急激に減少したという。半導体売上高が前年比で減少した月は、2016年7月以来のことになる。 - 「シリコン・サイクル」の正体
今回は、「シリコン・サイクル」について解説する。シリコン・サイクルの4つの状態と、シリコン・サイクルが備える特性を紹介する。 - Intel 10nmプロセスの遅れが引き起こしたメモリ不況
2018年、メモリ市場の成長に暗雲が立ち込め、メモリ不況が避けられない事態となった。アナリストらは、メモリの過剰供給による価格の下落を要因として指摘しているが、どうも腑に落ちない。そこで筆者は、Intelの10nmプロセスの遅れという点から、メモリ不況の要因を探ることにした。