NEDOら、機能性材料の開発期間を短縮可能に:9つの機能別シミュレーター公開
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と産業技術総合研究所、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は、革新的な機能性材料の開発を効率よく行うための「シミュレーター」を開発し、順次公開する。
4月12日に説明会開催、5月中旬より助成事業を公募
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と産業技術総合研究所、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は2019年4月、革新的な機能性材料の開発を効率よく行うための「シミュレーター」を開発したと発表した。開発した9つの機能別シミュレーターは順次公開する。
NEDOは、有機・高分子系機能性材料を対象として、開発期間を大幅に短縮するための材料設計基盤技術の開発に取り組んできた。シミュレーターの開発もその一環である。先端材料の研究開発工程ではこれまで、実験データをベースに専門技術者の「経験と勘」に頼ることも多かった。そこでNEDOは、最新のシミュレーターを活用することにより、従来手法に比べて開発期間を20分の1に削減することを目指してきた。
開発したシミュレーターは、主に「誘電材料」や「複合材を含む高分子材料」「機能性化成品(触媒など)」「ナノカーボン材料」「半導体材料」などの有機・高分子系機能性材料が対象となる。これらの材料開発においては、求められる特性が多岐にわたることから、適用する材料別に9つのシミュレーターを開発したという。
今回開発したシミュレーターは以下の通り。
- 電気・光などのキャリア輸送シミュレーター
- 界面原子ダイナミクス・反応シミュレーター(I、II)
- モンテカルロフルバンドデバイスシミュレーター
- 誘電率などの外場応答物性シミュレーター
- 電圧印加粗視化分子動力学シミュレーター(I、II)
- 汎用インタフェース(拡張OCTA)
- フィラー充填(じゅうてん)系コンポジットシミュレーター
- ナノカーボンコンポジット用シミュレーター
- 反応性流体シミュレーター
NEDOは、開発したシミュレーターの公開に向けて、2019年4月12日午後1時より産業技術総合研究所臨海副都心センターで説明会を開催する。参加費は無料だが事前登録が必要。さらに、このシミュレーターを用いた機能性材料の開発を支援する助成事業についても、2019年5月中旬より公募を始める予定である。
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