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データセンターを支える光伝送技術 〜データセンター間を相互接続する技術光伝送技術を知る(6)(3/3 ページ)

近年、地理的に分散した複数個のデータセンターを接続するデータセンター間相互接続通信(DCI:Data Center Interconnect)が注目されている。今回は、そうした技術の幾つかを解説する。

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リージョナル・データセンター間相互接続に使用される光トランシーバー

 図4にMicrosoftのDCIの構成を示す。Tear1はLeaf、Tear2はSpineスイッチに相当する。リージョナル・データセンター間接続では、Spineスイッチのソケットに、波長多重可能な80km伝送の光トランシーバーを直接挿入する。Spineから出た光信号はそのまま光多重して伝送され、波長分離して送信先データセンターのSpineで受信される。

 この東西トラフィック接続はRegion内データセンター群のLeaf/Spineスイッチネットワークの部分ネットワークである。このため、その伝送速度はLeaf/Spineと同じである。データセンターのスイッチネットワークの伝送速度が100GbE(ギガビットイーサネット)の場合、DCIも100GbEである。さらに、経済性やメンテナンス性などからデータセンター内のスイッチと同一の光トランシーバー形式(Form Factor)が要求されている。


図4 DCIの構成例(参考(クリックで拡大)

 Microsoftでの例を図5に示す。Region内のデータセンターの接続は「inter-DC」と表記されている。図5で示されているように、「100G ecosystem」と100GbEでデータ伝送速度が統一されているだけでなく、光トランシーバのモジュール形式(Form Factor)はデータセンター内(intra-DC)の光トランシーバと同じ親指サイズのQSFP28で統一されている。接続距離によって方式(「Modulation」)は異なるがRegion内の光トランシーバのソケットを統一したのが特徴である。このことによりスイッチ間の距離に応じたQSFP28光トランシーバを挿入できる。


図5 Microsoftのデータセンターでの光技術(前出の出典1を参照)(クリックで拡大)

 現在の100GbEにおいて、Microsoftは米国InphiのColorZを使用しているといわれる。図6に示したInPhiの資料によれば、100Gbpsでは、100km以上の長距離ではデジタルコヒーレント方式が主流だが、消費電力が大きいため小型化が困難である。


図6 InPhiの波長多重100GbEトランシーバー(クリックで拡大)

 ColorZでは、少し波長をずらした2本の50Gbps PAM4光信号をセットで100GbEとし、波長多重の標準の一つである100GHzの波長間隔に詰める。図6によれば、40チャネルの100GHz間隔の波長多重を利用し、1本のファイバーで4Tbpsで伝送できる。

 50Gbps PAM4はIEEE 400GbE-LR8/FR8にも採用されている、振幅変調・直接検波(IMDD)という、低消費電力で小型化が可能な方式の一つである。図6右下にあるように、1スロットに4つのレベルを持ち、周波数帯域またはBaud Rateがビットレートの半分である。50Gbps PAM4は25GBaud信号であり、これを80km伝送するにはDSPでの信号処理が必須だ。

 ちなみに、Region間は100kmを超える距離なので、デジタルコヒーレント受信技術が用いられている。図5の表内にある「CFP2」とは、名刺サイズのモジュール形式(Form Factor)を指し、伝送装置やルーターなどで使用されている。「ACO」は、送受信の光デバイスとその駆動回路や受信回路ICを搭載し、インタフェースがアナログ信号である(ACO: Analogue Coherent Optics)コヒーレント通信用トランシーバーモジュールであり、送受信DSPはボード上に置かれている。

 こうして、20mから100km超まで、データセンター全体が100GbEのデータレートで接続されている。

 図5を見ると、Microsoftの次世代(Tomorrow's technology)は「400G ecosystem」と示されている。この表では、Region内(<100km)では伝送方式(「modulation」)が決まっている。DCI、すなわち「Inter-DC」は、400GZRというOIF(Optical Internetworking Forum)において議論されているコヒーレント受信方式のDP-16QAMという方式である。

 モジュール形式(form factor)は、intra-とinter-DCは同一であることが求められるが未定、つまり「TBD(To Be Defined)」だ。400GbEではQSFP56-DDとOSFPが候補となっている。両方とも19インチの標準スイッチシャシーにおいて32ポート搭載可能である。OSFPは許容消費電力が大きい。一方、QSFP-DDは40GbEのQSFP+と100GbEのQSFP28とダウンコンパチであり、有力だが消費電力が大きい400GZRを収容できるかが不明である。

 400GbEリージョナルDCIでは、データセンター内と同一の情報容量とモジュール形式が要求されるため高い技術の開発が必要である。デバイスとしてはSi-photonicsとInP Photonic Integrated Circuit(PIC)が有力視されている。DSPとしては低消費電力化から7nm CMOSプロセスが適用される予定である。


筆者プロフィール

高井 厚志(たかい あつし)

 30年以上にわたり、さまざまな光伝送デバイス・モジュールの研究開発などに携わる。光通信分野において、研究、設計、開発、製造、マーケティング、事業戦略に従事した他、事業部長やCTO(最高技術責任者)にも就任。多くの経験とスキルを積み重ねてきた。

 日立製作所から米Opnext(オプネクスト)に異動。さらに、Opnextと米Oclaro(オクラロ)の買収合併により、Oclaroに移る。Opnext/Oclaro時代はシリコンバレーに駐在し、エキサイティングな毎日を楽しんだ。

 さらに、その時々の日米欧中の先端企業と協働および共創で、新製品の開発や新市場の開拓を行ってきた。関連分野のさまざまな学会や標準化にも幅広く貢献。現在はコンサルタントとして活動中である。


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