ラズパイの産業利用を加速する専用モジュール群:メカトラックスが展示
メカトラックスは、「ワイヤレスジャパン2019」(2019年5月29〜31日、東京ビッグサイト)で、「Raspberry Pi(ラズパイ)」専用の通信モジュールや、ラズパイを屋外で使うためのキット「Pi-field」などを展示した。【修正あり】
メカトラックスは、「ワイヤレスジャパン2019」(2019年5月29〜31日、東京ビッグサイト)で、「Raspberry Pi(ラズパイ)」専用の通信モジュールや、ラズパイを屋外で使うためのキット「Pi-field」などを展示した。
メカトラックスは、ラズパイ周辺機器の製造/販売および、ラズパイ組み込み機器の受託開発を手掛ける。ラズパイ専用の通信モジュールとしては、3Gに対応する「3GPi(スリージーパイ)」と4G対応の「4GPi」がある。
同社は3GPiを発売したのは2014年ごろだ。ホビー用途を想定して販売を開始したが、「意外にも法人からの問い合わせが多かった」と、同社の代表取締役を務める永里壮一氏は述べる。「問い合わせてきた企業にヒアリングをして、初めてラズパイが産業用途でも利用されていることが分かった」(同氏)
永里氏は、「周辺機器とソフトウェアが豊富なラズパイを使えば、“ありもの”で動く機器をすぐに作れるので、プロトタイプの作成に適している。プロトタイプだけでなく、実稼働もラズパイで行っている事例も増えている」と説明する。ラズパイを産業用途で数千台のレベルで稼働させている企業も、メカトラックスの顧客だけで既に数社、存在するという。
メカトラックスは、3GPiの発売以降、ラズパイをビジネスユースに利用しやすいように、ラズパイ専用のモジュールを開発してきた。4GPiの他、高精度A-D変換モジュール「ADPi(エーディーパイ)」、電源管理/死活監視モジュール「slee-Pi(スリーピー)」などである。
ラズパイは、とりわけ電源周りが弱いといわれる。slee-Piでは、slee-Pi本体に12Vを供給し、そこから5Vに降圧してピンヘッダ経由で供給することでラズパイの電源を安定化していると、永里氏は説明する。slee-Piを使うことでラズパイの間欠動作や死活監視が可能になる。slee-Piを、ADPiや3GPiと併用することもできる。
【記事修正:2019年6月6日13時 掲載当初、「slee-Pi本体からピンヘッダ経由でラズパイに12Vを供給し、そこから5Vに降圧することでラズパイの電源を安定化している」と記載しておりましたが、「slee-Pi本体に12Vを供給し、そこから5Vに降圧してピンヘッダ経由で供給することでラズパイの電源を安定化している」の誤りです。お詫びして訂正致します。】
屋外で使いたいというニーズにも応えた。防水ボックスに太陽光パネルや蓄電池、「Raspberry Pi 3 Model B」、4GPi、slee-Piなどを搭載して固定、配線したキット「Pi-field」は、電源やインターネット接続環境がなくても、ラズパイを使った環境モニタリングなどが可能になる。メカトラックスは、1年間の通信費用が含まれた、SIMカード付きプランも提供する。
既存の製品の他、ラズパイ用I/Oボードのカスタマイズにも対応している。さらに、永里氏が「通信販売サイトなどでも1個から購入できる」と述べる通り、1台、100台といった小ロット製造にも柔軟に対応可能だという。永里氏は、「B to B(Business to Business)では、最初は100台だけといった要望も多い。だが単価を下げるためには、少なくとも1000台製造する必要がある。それだと、メーカー側もなかなか決断できないケースも多い」と述べ、小ロット対応ができるメカトラックスの利点を強調した。
永里氏は、展示ブース内で行ったセミナーで、「ラズパイは、『まずは、やってみよう』を素早く、安価に実現する。一番早く製品を世に出せれば、その分野での先駆者になれるし、それだけよりよい情報や人が集まり、事業をさらに加速できる。そして、いったん製品が世に出れば、消費者は基板(ラズパイなのか、そうでないか)のことなど気にしない」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- オムロンがセンサーをラズパイ対応にした狙い
オムロンが、新規事業創出を目指すべく2018年4月に創設した「イノベーション推進本部」。そのイノベーション推進本部が2019年1月、新たな取り組みとして、「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、以下ラズパイ)」や「Arduino」などのオープンプラットフォームに対応したセンサーを発表した。 - 「ラズパイ」最初の10年、今後の10年
手のひらサイズの安価な小型コンピュータ「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、ラズパイ)」は、2018年に“10周年”を迎えた。現在、ラズパイの用途は、当初の目的だった教育用途よりも、産業用途が上回っている。 - ソフトバンクとAlphabet、“空飛ぶ基地局”設置へ
ソフトバンクは、2019年4月25日、AeroVironmentとの合弁会社であるHAPSモバイルを通して、成層圏に無人航空機を飛ばして通信基地局とする「HAPS事業」を展開することを発表した。無人航空機「HAWK30」も開発しており、2023年の実用化を目指す。 - 「5Gはビジネスモデル構築の段階に」 ドコモ講演
NTTドコモの執行役員で5G(第5世代移動通信)イノベーション推進室室長の中村武宏氏は2019年4月12日、東京都内で開催された「Keysight 5G Sumimit 2019」のなかで、「5Gのリアルと未来」と題した基調講演を行った。中村氏は、「世界的にも5Gの商用化が前倒しされており、2019年から多数の国・都市で5G商用化が始まる。ドコモとしても、次のフェーズへ進まなければならない」と語り、商用化に向けた取り組みや今後の展望を説明した。 - Qualcommの5Gモデム「Snapdragon X55」、下りは最大7Gbps
Qualcommは2019年2月19日(米国時間)、5G(第5世代移動通信)対応モデム「Snapdragon X55」を発表した。5G NRではミリ波帯とサブ6GHz帯をサポートする。5Gにおいて、理論上は下りで最大7Gビット/秒(bps)、上りは最大3Gbpsを実現するとしている。