Intel、EUVの準備は整ったが課題も:適用するノードは明らかにせず
IntelのEUV(極端紫外線)プログラムの責任者であるBritt Turkot氏は、「EUVリソグラフィは導入の準備ができており、技術開発に向けた量産体制に入っている」と述べた。しかし、「複雑で高額なシステムを利用して最先端のチップを量産するには、依然としていくつかの課題がある」とも述べている。
IntelのEUV(極端紫外線)プログラムの責任者であるBritt Turkot氏は、「EUVリソグラフィは導入の準備ができており、技術開発に向けた量産体制に入っている」と述べた。しかし同氏は、「複雑で高額なシステムを利用して最先端のチップを量産するには、依然としていくつかの課題がある」とも述べている。
IntelのフェローでEUV担当ディレクタを務めるTurkot氏によると、米国オレゴン州ポートランドにある同社の工場では、居室サイズのシステムが稼働しているという。同氏は、現在量産している10nm製品や、開発を計画している7nmノードに、EUVを適用するのかどうか、適用するならばどう適用するのかについては明らかにしなかった。
Intelは、20年以上前からEUV開発に携わってきた半導体メーカーの1社だが、同技術の適用については後じんを拝する形となった。同社のライバルであるSamsung ElectronicsとTSMCはそれぞれ2018年に、7nmプロセスにEUVを適用すると発表している。
ただし、2つの情報筋が「TSMCの『N7+』プロセスは、4つのメタル層にのみEUVを適用している」と述べていることから、同社のEUV技術には課題が残ると推察される。つまりTSMCは、複数のメタル層には、従来の液浸ステッパーによるダブルパターニングを適用していると考えられる。
ある匿名の情報筋は、「TSMCは、スループットや同社が所有するEUVマシンの台数、コスト的なトレードオフの観点からこのような決断に至ったと思われる。一方、SamsungはEUVマシンに、より多額の投資を行った可能性が高い」と述べていた。
EUVシステムは、1台当たり約1億5000万米ドルのコストが掛かる。しかも商用生産には、複数のEUVシステムが必要だ。
TSMCの広報担当者は、「確かに、多くの層にダブルパターニングを適用している」と認めているが、N7+ノードの何層のメタル層にEUVを適用しているかについては明らかにしていない。同氏は、「さまざまなことを検討した上で、液浸ダブルパターニングとEUVを併用することを決断した。液浸ダブルパターニングに対するEUVのコストと成熟度は、非常に重要な検討要素だ」と述べている。
一方、ある情報筋によると、SamsungはEUVを適用した7nmノードの価格を積極的に引き下げ、一部の新興企業に、競合他社のマルチレイヤーマスク(MLM)よりも安い価格でフルマスクセットを提供しているという。TSMCは、少量生産のコストを削減するために2007年にMLMマスクセットを導入している。MLMマスクセットの価格は、フルマスクセットの約60%と言われている。
Samsungは、同社のファウンドリーの構築に掛かったコストやEUVの適用方法については明らかにしていない。Samsungのある幹部は、Intelの10nmプロセスの開発が遅れたのは、アクティブ領域のゲートコンタクト形成(COAG:Contact Over Active Gate)を野心的に進めたことが原因だと推察しているという。この幹部は、「Samsungは、段階的にCOAGに移行する計画だ」と述べたが、詳細は語らなかった。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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