Huaweiへの輸出禁止措置で最も痛手を負うのは米国?:レアアース輸出制限の可能性も(2/2 ページ)
Huaweiは米国の半導体チップを始めとするさまざまな部品の供給を止められることで、短期、中期的には深刻な影響を受けることになるだろう。しかし、アナリストの中には、「長期的に見ると、中国が自立への取り組みを強化し、欧州やアジアなどに拠点を置くサプライヤーからの部品調達を重視していけば、最も強い痛みを感じることになるのは確実に米国のサプライヤーの方だ」とする見方もある。
中国によるレアアースの輸出制限の可能性も
特にIntelやBroadcom、Micron Technology、Qualcommなどのメーカーは、トランプ政権の禁止措置に従ってHuaweiとの取引を停止することにより、短期的には売上高が減少するとみられる。Goldman Sachsによると、2018年第3四半期だけを見ても、Huaweiが売上高全体に占める金額は、Broadcomで3億米ドル以上、Qualcommで2億3000万米ドル以上、Intelで約9000万米ドルだったという。Micron Technologyは、最近提出した規制関連の申し立ての中で、「当社の2019会計年度前期において、売上高全体に占めるHuaweiの割合は、13%だった」と述べている。
市場アナリストたちは、「株価がHuaweiに依存し過ぎている」と指摘する。中でも、QorvoやSkyworks Solutions、Keysight Technologies、Inphi、Lumentumなどのメーカーは、米国政府の禁止措置を受けて、アナリストによって格下げされている。
一部の米国メーカーは、禁止措置の後で売上高予測を修正している。オプティカル/フォトニック製品メーカーであるLumentumは、現行四半期の売上高予測を4億500万米ドルとしていたが、そこから7.4%減となる3億7500万米ドルに下方修正している。Lumentumの前四半期の売上高全体のうち、Huaweiの占める割合は18%だったという。
Huaweiの禁止措置は長期的に見ると、米国半導体業界にとって大きな一撃となる可能性がある。しかし、米国の半導体チップメーカーに対する真の影響は、Huaweiが輸出関連のブラックリストに載せられたことに対して、中国がレアアースの輸出を制限するという報復に出た場合に生じるのではないか、と強く懸念されている。貿易戦争が繰り広げられる中、Huaweiがブラックリストに載せられたことを受け、中国はここ数週間の間に、レアアースの関税を引き上げ、輸出を完全に中止すると威嚇している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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