自動運転車の“誇大広告”は、やめよう:レベル5の実用化は2030年以降?(3/3 ページ)
今こそ、自動運転車について率直な議論を行うべき時ではないだろうか。最近の予測では、どのメーカーも2025年まで、自動運転車への投資に対する見返りを得られそうにないとされている。また、完全な自動運転車の実現は、早くても2030年以降になる見込みだという。
膨大な投資、どう回収する?
最も重要なのは安全性であることに異議を唱える人はいない。だが、最も楽観的なパネリストでさえも、自動走行車の最初の大量生産は2025年以降になると予測している。
そうなると、業界は自動走行技術に注ぎ込んだ数百億米ドルをどのように取り戻す計画なのだろうか。
戦略としては、賢いセグメンテーション(実用的に意味を成す場所でのみ、自動走行車のロールアウトを始める)、さらなるデータの収集、開発と学習を重ねる、他の自律システムの自動化技術を再利用する、そして機が熟すまで辛抱するなどが挙げられる。実際の見返りは誰も保証していないにもかかわらず、今後5〜10年にわたる自動走行車開発への追加投資については正当化されている。
Nioのソフトウェア製品マネジメント担当バイスプレジデントを務めるRachad Youssef氏は、見返りは、より漠然としたものになると考えている。同氏は、初期投資を行うことと、自動運転車市場の早期参入者になることで、「マインドシェアを獲得する」ことを望んでいると述べた。
Youssef氏によると、新興企業は自動運転車を実用的な形で適用できるような特定のユースケースを見いだす必要があるという。同氏は「自動運転車産業はいまだ初期段階である。(中略)だが、投資の見返りを得る方法はいくつもあると、われわれは考えている」と述べながらも、Nioの特定の計画を明らかにはしなかった。
現時点では、自動運転車の世界的なロールアウトを予測している人はいない。むしろ、パネリストらは、自動走行車はさまざまな地域の市場の異なるニーズに合わせて投入されるべきとの見解を示した。Youssef氏は、「上海のような街で自動運転車を利用することや、ベイエリア(米国カリフォルニア州サンフランシスコの湾岸地域)の国道101号線を運転することは理にかなっている」と述べた。
BytonのShao氏は、投資の見返りについては、まず「いくら」、次に「どれくらい長い期間において」が問題になると指摘した。同氏は「長いプロセスになると私は思う。全員が持久戦に備えるべきだ」と述べた。
自らを「自動車メーカーの中では楽観主義者」と呼ぶShao氏でさえも、「2025年までに見返りを得られることはないと思う」という見解を示した。現時点における自動運転車に対する世間の支持や法律、規制、NCAP(New Car Assessment Programme)の要件などを考慮すると、自動運転車の“規模の経済”が本格化するのは2025年以降になるとShao氏は説明した。“市場規模なくしては、報酬なし”ということだ。
LuminarのAlbuquerque氏は、2025年どころか2030年にならないと、大きな見返りは得られないと考えている。一方で同氏は、ライドシェアサービスの右肩上がりの人気には、明るい兆しを見いだしているという。
一方でBytonのShao氏は、ロボタクシーについてさえも「投資を回収できるのは2025年以降になる」との見解を述べた。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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