EV市場の“有望株”は東南アジア、急成長への期待:充電インフラなどの課題もあるが(2/2 ページ)
ASEAN諸国は、今後5年の間に、最も成熟した電気自動車(EV)市場の一つになるとみられている。必要とされる技術のほとんどが、既に現地にあるか、または今後実現される見込みだということに加えて、電気自動車への切り替えに対する消費者たちの意欲も大きいなど、あらゆる状況が良い方向に向かっているためだ。
税率や充電インフラなどの障壁も
東南アジアには、電気自動車に関して克服すべき障壁が、まだいくつか残っている。Rutronikで戦略的マーケティング担当ディレクタを務めるAndreas Mangler氏は、「東南アジアで電気自動車の導入を実現する上での主要な障壁としては、電気自動車の税率が非常に高いことや、使い勝手の良い近い場所に充電インフラがないこと、電気自動車で走行できる範囲が限られていることなどが挙げられる」と述べている。
同氏は、「ASEANで電気自動車の成長拡大をけん引する重要な鍵となるのは、政府の介入によって充電インフラの開発を確実に保証することだ。充電インフラは、対応する標準規格に準拠し、大規模な導入にも対応可能でなければならない」と述べる。
QuantelのYip氏も、こうした見解に同意する。同氏は、「電気自動車に関しては、政府による政策が必要だ。例えば、英国ロンドンでは、超低排出ゾーン(ULEZ:Ultra Low Emission Zone)を定め、排出ガス基準を満たさない車両がロンドン市内に乗り入れる場合に、通行料を課している。ベトナム政府は現在、これと同じように、都市部に乗り入れることができる車両を電気自動車のみに制限する方向を目指しており、近々策定する予定だという」と述べている。
東南アジアにおける電気自動車導入への動きは、大陸全体の動向の一端だといえる。Mangler氏は、「アジア市場の電気自動車については、目の前のASEAN諸国ではなく、もっと先に目を向けると、ほぼ無限ともいえるチャンスが広がっている。内燃エンジンをベースとした自動車の世界市場における競争はあまりにも固定化されているため、特に中国にとっては、電気自動車開発に注力することが最善策だといえる」と述べる。
Lin氏は、「東南アジアでは、石油が比較的安価であるため、電気自動車の普及を成功させるためには、充電ステーションインフラが不可欠だ。インフラを構築するためには、今後約5年間を要するだろう。しかし東南アジアは必ずや大きな成功を収め、電気自動車の製造および輸出において理想的な地域になるはずだ」と述べている。
Infineon Technologiesでバイスプレジデントを務め、アジア太平洋地域市場開発戦略部門を率いるRohit Girdhar氏は、「東南アジアで持続可能な国内市場を実現するためには、さまざまな変化を起こす必要がある。まずはインフラと、利用可能な充電ネットワークが不可欠だ。そして、所有コストを低く抑えること、または既存の自動車と同程度にすることの他、政府が奨励策を実施することなどが必要である」との見解を語った。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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