次世代メモリの長所と短所を一覧する:福田昭のストレージ通信(157) 半導体メモリの技術動向を総ざらい(16)(2/2 ページ)
本シリーズの最終回となる今回は、次世代メモリの長所と短所をまとめる。既存のメモリ技術ではDRAM、NANDフラッシュが主流であり、少なくとも今後5年間はその地位が揺らぐことはないだろう。
ReRAMの大容量化では3次元クロスポイント構造に期待
「MRAM(磁気抵抗メモリ)」の長所は、次世代メモリの中では最も高速であることだ。最大記憶容量(シリコンダイ当たり)で1Gビットの単体メモリ製品がサンプル出荷されており、256Mビットの単体メモリ製品が販売されている。短所は記憶容量当たりのコストが非常に高いことである。このコストが阻害要因となり、64Mビット以上の大容量品はあまり使われていない。16Mビット以下の小容量品が現在でも販売の主流である。
「ReRAM(抵抗変化メモリ)」の長所は、かなり高速であることと、メモリセルの構造がシンプルである(製造コストを低くできる)ことだ。マイクロコントローラ(マイコン)のROMを置き換えるメモリとして製品化が始まり、現在では単体メモリ製品も市販されている。単体メモリ製品の最大容量は4Mビットとあまり大きくない。最近では記憶容量を8Mビットに拡大した単体メモリ製品の販売が発表されている(関連記事:容量8MビットのReRAMを製品化)を参照)。
ReRAMの大容量化で期待がかかるのは、3次元クロスポイント構造である。いくつかのメモリベンダーで研究開発が進められている。2020年には製品が登場する可能性が少なくない。
「NRAM(カーボンナノチューブメモリ)」の長所は、高速かつ高密度で書き換えサイクル回数が多く、データ保持特性に優れることである。短所はコアとなる技術の開発企業がベンチャー1社に限定されていることと、量産品のデータがないことだ。以前には2018年に最初のメモリ製品が登場するとアナウンスされていたものの、開発は遅れている。サンプル出荷は早くても2019年末になるだろう。
「FeRAM(強誘電体メモリ)」の長所は、高速であることと、1個のトランジスタでメモリセルを作れるので高密度にできること、書き換えサイクル回数を多くできそうなことだろう。短所は、学会発表レベルでも製品に近い水準の成果が出てきていないことである。製品化にはまだ、5年くらいの期間を必要とする可能性が高い。
DRAMとNANDフラッシュの地位は揺るがない
既存のメモリ技術では、DRAMとNANDフラッシュメモリが主流である。短くとも今後5年の間は、両者の地位が揺らぐことはないだろう。DRAMの微細化は非常にゆっくりと進んでいく。NANDフラッシュメモリの高密度化は、3D NAND技術としては次々世代、積層数としては200層クラスまでは製品開発が約束されている。この高い開発速度に付いていけるメモリ技術は、ほかにはない。
(次回へ続く)
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