シャープ、色素増感太陽電池ビーコンを清水建設に納入:メンテナンスフリー
シャープは2019年8月7日、発電効率が約20%と高い色素増感型太陽電池(以下、DSSC)を用いた電池交換不要のBluetoothビーコン端末を製品化し、屋内外音声ナビゲーションサービスを展開する清水建設に対し納入を開始したと発表した。
シャープは2019年8月7日、発電効率が約20%と高い色素増感型太陽電池(以下、DSSC)を用いた電池交換不要のBluetoothビーコン端末を製品化し、屋内外音声ナビゲーションサービスを展開する清水建設に対し納入を開始したと発表した。
シャープは、屋内光での発電効率に優れるDSSCの研究開発を継続的に実施。2018年には「世界最高レベル」(同社)という約20%の屋内における変換効率を誇るDSSCの量産体制を確立し、DSSCのマーケティング、販売活動を本格化させていた(関連記事:シャープの色素増感太陽電池が離陸間近、屋内で高効率)
今回、製品化したビーコン端末はDSSCの市場投入第1弾。「レスビー」という製品名で、屋内測位システムや大型商業施設などでの情報発信サービスなどに向けて広く展開する方針。
メンテナンスフリーで干渉少ない高所に設置可能
製品化したビーコン端末は、DSSCを唯一の電源として動作。一次電池を搭載しないため電池交換の必要がなく“メンテナンスフリー”という特長を持つ。同社研究開発事業本部材料・エネルギー技術研究所第三研究室課長の中野雅行氏は「一次電池搭載ビーコン端末では、電池交換がしにくい、高さ2mを超えるような高所に設置することが難しかった。DSSC搭載ビーコンは、バッテリー交換が不要で10年程度メンテナンスフリーのため、高所に設置することができる。高所への設置は、電波への人の干渉も防ぐことができるというメリットもある」と説明する。
ビーコン端末レスビーは壁面への設置を想定し、壁取り付けのコンセントや照明スイッチのような薄型形状で、サイズは74×134×7mm。重さは62g。壁にネジ止めする下蓋部と、DSSCやBluetoothモジュールなどが搭載された上蓋部で構成され、ネジ止め時も、外観からネジが見えない構造になっている。DSSCのサイズは、47×90mm。
300luxでも100ミリ秒間隔で発信
動作照度範囲は50luxから1万lux。「天井の四隅の明るさに相当する」(中野氏)という300luxの照度で、屋内測位向けの各種Bluetoothビーコン仕様で求められる、100ミリ秒間隔の電波発信頻度を実現できるとする。なお、照度50luxでも1秒間隔での発信頻度を実現できる。
「太陽電池を搭載する競合のビーコン製品は、同サイズであれば1000lux程度の照度がなければ100ミリ秒の発信頻度を実現できなかったり、3倍程度の面積が必要になったりする。世界トップクラスの変換効率を持つDSSCにより、小面積、低照度でも十分な発信頻度を確保できるビーコン端末が実現できた」(中野氏)。なお、Bluetooth通信デバイスについては「市販されている一般的なBluetooth通信機能搭載マイコンを使用した」(中野氏)とした。
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