東大、3直列ミニモジュールで変換効率20%超:ペロブスカイト太陽電池
東京大学の瀬川浩司教授らは、ペロブスカイト太陽電池ミニモジュールで20%を超える変換効率を達成した。
ペロブスカイトの成膜条件を最適化
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の瀬川浩司教授らは2019年7月、ペロブスカイト太陽電池ミニモジュールで20%を超える変換効率を達成したと発表した。
発電層に有機金属ハライドペロブスカイトを用いた太陽電池(PSC)は、製造プロセスが比較的容易で、結晶シリコン太陽電池に迫る光エネルギー変換効率を実現できることから、次世代太陽電池として注目されている。
ところが、PSCで変換効率が20%を上回るのは、ほとんどが小さい面積のセルである。例えば、セル面積が0.095cm2では、変換効率24.2%が報告されている。しかし、大面積の直列モジュールだと、性能のばらつきなどにより変換効率は18%台にとどまり、20%を上回ることはこれまでなかったという。
瀬川氏らはこれまでに、カリウム(K)を添加した有機金属ハライドペロブスカイトを用いたPSCで、I-Vヒステリシスを大幅に低減できることを明らかにしてきた。今回は、ペロブスカイトの成膜条件を最適化することで、面積が0.187cm2の単体セルで変換効率22.3%を実現。アクティブエリアが2.76cm2の3直列ミニモジュールを作製し評価したところ、変換効率20.7%を達成した。
PSCの製造プロセスは、FTO(フッ素を添加した酸化スズ)基板上に、レーザーエッチングでパターンを形成。そのあと、酸化チタン緻密層と酸化チタンナノ粒子層を積層し、その上にペロブスカイト層を作成した。さらに、ホール輸送層を成膜、2回目のレーザーエッチングで各セルを切り離し、その上に金電極を設ける方法である。
PSCの実用化に向けては、「大きい面積で変換効率も高く、I-Vヒステリシスを示さないこと」が必要だと指摘する。今回は、I-Vヒステリシスが極めて小さいカリウムドープペロブスカイト太陽電池の性能を高めることで、大きい面積でも変換効率が高いモジュールの開発に成功した。
瀬川氏は、自身がリーダーを務めるNEDOプロジェクトの参画企業に、今回の研究成果を技術移転し、早期実用化を目指す考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 東芝、タンデム型太陽電池で発電効率23.8%達成
東芝は、透過型の亜酸化銅を用いたタンデム型太陽電池で、23.8%の発電効率を達成した。 - ペロブスカイト太陽電池、スズ系で変換効率7%以上に
京都大学と大阪大学の研究グループは、高品質で再現性に優れるスズ系ペロブスカイト半導体膜の成膜法を開発した。光電変換効率が7%を上回るペロブスカイト太陽電池の作製が可能となる。 - ペロブスカイト太陽電池の寿命、従来比10倍に
東京大学大学院工学研究科の松尾豊特任教授らは、耐久性をこれまでの10倍に向上させたペロブスカイト太陽電池の作製に成功した。 - 東京理科大、波動性示す有機半導体pn接合を実証
東京理科大学らの研究グループは、有機半導体エピタキシー技術を用いて作製した有機半導体pn接合において、電子と正孔の両方が「波動」性を示すことを実証した。 - 長期間、皮膚に貼り付けて心電計測が可能に
理化学研究所(理研)は、極めて薄い有機太陽電池で駆動する「皮膚貼り付け型の心電計測デバイス」を開発した。 - シャープの色素増感太陽電池が離陸間近、屋内で高効率
シャープは色素増感太陽電池(DSSC)の市場投入に踏み切る。既に「量産レディーな状況」とする同技術は2018年度中の量産開始を見込んでおり、同社はDSSCの特長を生かした複数のアプリケーションを提案中だ。