東芝、タンデム型太陽電池で発電効率23.8%達成:n層とp層の界面電位差を小さく
東芝は、透過型の亜酸化銅を用いたタンデム型太陽電池で、23.8%の発電効率を達成した。
透過型亜酸化銅を用いコストを低減
東芝は2019年6月、透過型の亜酸化銅(Cu2O)を用いたタンデム型太陽電池で、23.8%の発電効率を達成したと発表した。単結晶シリコン(Si)単体の発電効率を上回る数値を実現した。
発電効率を高めることができるタンデム型太陽電池は、異なる性質の太陽電池(セル)を重ね合わせて用い、2つのセルで発電する仕組みである。東芝は2019年1月、Cu2Oを用いたセルの透明化に成功していた。
開発した透過型Cu2O太陽電池は、裏面電極、p層、n層、表面透明電極で構成される。p層のCu2O薄膜は短波長光を吸収して発電する。この時、p層とn層の組み合わせによっては、界面に生じる電位差が大きくなり効率が低下することもあるという。トップセルを透過した長波長光でボトムセルの結晶Si太陽電池が発電する。開発当時のタンデム型太陽電池は、全体の発電効率がSi単体と同等の22%(トップセルが4.4%、ボトムセルが17.6%)であった。
そこで今回、n層に新しいn型酸化物半導体材料採用し、p層とn層の界面における電位差を小さくすることに成功した。この結果、タンデム型太陽電池の効率は全体で23.8%となり、結晶Si太陽電池単体に比べ効率が1.8ポイントも上昇した。
東芝は今後、n層の適正化をさらに進め、30%台の発電効率を目指すという。3年後には透過型Cu2O太陽電池と、それを応用したタンデム型太陽電池の実用化にめどをつける考えだ。タンデム型太陽電池としては、ガリウムヒ素半導体を用いて発電効率を30%台に向上させた事例も報告されているが、製造コストが極めて高く、実用化に向けて大きな課題となっていた。
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