シャープの色素増感太陽電池が離陸間近、屋内で高効率:2018年度中の量産開始を目指す
シャープは色素増感太陽電池(DSSC)の市場投入に踏み切る。既に「量産レディーな状況」とする同技術は2018年度中の量産開始を見込んでおり、同社はDSSCの特長を生かした複数のアプリケーションを提案中だ。
シャープは色素増感太陽電池(DSSC)の市場投入に踏み切る。既に「量産レディーな状況」(同社担当者)とする同技術は2018年度中の量産開始を見込んでおり、同社はDSSCの特長を生かした複数のアプリケーションを提案中だ。
屋内で高効率発電、シャープ独自技術で低コスト・小型化を達成
DSSCは、屋内環境下のIoT(モノのインターネット)デバイス用電源やエナジーハーベスティング素子としての活用に期待が集まっている。
太陽光発電で一般的に用いられる結晶シリコン型は、太陽光環境下では変換効率が約25%に達するが、屋内における変換効率は数パーセント程度まで低下する。これに対し、DSSCは感度特性が屋内光のスペクトル分布にマッチしており、屋内における変換効率が約20%と高い数値を誇る。また、アモルファスシリコン(a−Si)に対しても、変換効率における照度依存性の面で優れているという。
さらに、同社のDSSCは他社が開発するDSSCと比較して、低コスト・高効率・小型であることが特長だ。
従来のDSSCでは、高コストな透明導電膜(TCO)付きガラス基板を2枚使用するが、同社製DSSCでは集積構造を工夫し、モノリシック型を採用。これによりTCO付きガラス基板を1枚のみ用いる低コストな電池となった。
また、電極内で光を閉じ込める「光閉じ込め電極」を開発し、光が色素に吸収される確率を高めたことや、同社と富士フイルムが共同開発した新規色素を採用したことで高効率化を果たした。
DSSCの小型化では、液晶パネルで培ったプロセス技術が活用された。従来のDSSCでは信頼性確保のため額縁が5mm程度必要となり、小型化と受光面積の両立が困難だった。同社製DSSCは、独自の封止技術を採用したことにより額縁を約1mmまで削減し、「2mm角の電池モジュールを開発しており、小型IoTデバイスの電源にも対応できる」(同社担当者)とする。
同社では、DSSCが活用できるアプリケーションとしてBLE(Bluetooth low energy)ビーコン、LPWAを活用したアナログ式圧力計読み取りセンサーソリューション、デジタルピッキング表示器などを挙げ、これらの製品を開発中であるとしている。
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