アナログやパワーデバイスでも、ファブ活用の価値はある:大山聡の業界スコープ(20)(4/4 ページ)
2019年7月23日付掲載の記事「90nmプロセスの多用途展開を加速するMaxim」は、興味深い内容だった。Maximは大手アナログICメーカーとして著名なIDM(垂直統合型)企業だが、ファウンダリメーカー(以下、ファウンダリ)の活用に関しても積極的だと聞いており、筆者はこの記事を読み「なるほど」と合点がいった。そこで、今回はファウンダリの活用方法について、私見を述べたいと思う。
Hua-Hong Grace
350nmプロセスの売上比率が高く、製品としてはディスクリートの比率が高い。中国向けが中心だが、日本にも固定顧客を持っている。
X-Fab
車載向けの売上比率が高く、産業機器向けと合わせると売り上げの過半を超える、というファウンダリ業界にあってやや異色なアプリケーション実績を持っている。SiC事業にも非常に積極的で、実績も急増中である。
なお、Global Foundryも主要ファウンダリの1社だが、非上場で財務データが未公開のため、ここでは紹介を割愛する。
グラフから分かる業界の状況と、ファウンダリ活用の有効性
各社のグラフを見て分かる通り、1Q19(2019年1-3月期)をボトムとして2Q(4-6月期)に回復を見せる企業が多いものの、1年前の2Q(2018年4-6月期)の実績に届いていない、あるいは期末在庫が増えている企業が多く、今後の見通しとしては予断を許さない状況が続いている。
最先端プロセスや生産能力で他社を圧倒するTSMCは別格として、他のファウンダリ各社はアナログICやパワーデバイス分野を重要視しながら差別化を図ろうとしている。車載や産業機器向けにカスタムICを必要とする機器メーカーにとって、この状況を利用しない手はない。半導体メーカー各社がアナログのカスタムICに消極的な現実も合わせて考えれば、ファウンダリ各社との連携を積極的に検討する価値がある、と筆者は感じている。
筆者プロフィール
大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現IHS Markit Technology)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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