ams、48億米ドルで再びOsramに買収を提案:「収益構造の多様化」を強調
近年、半導体産業ではM&A(合併買収)の情勢が過熱している。センサー開発を手がけるオーストリアのamsは2019年8月11日(現地時間)、48億米ドル(約43億ユーロ)でOsramに買収を提案したことを明らかにした。
近年、半導体産業ではM&A(合併買収)の動きが過熱している。センサー開発を手がけるオーストリアのamsは2019年8月11日(現地時間)、48億米ドル(約43億ユーロ)でOsramに買収を提案したことを明らかにした。
amsがOsramの買収を試みるのは、2019年に入り2回目である。amsが1回目の試みを諦めたのは同年7月のことで、買収を進めるための「十分な基盤」を見いだせなかったとしていた。だが、amsは今回、買収を再度試みることを決断した。買収が成功すれば、合併企業はセンサーソリューションやフォトニクスの幅広いポートフォリオを有する、売上高50億ユーロ規模の組織となる。
amsが1回目の提案を取り下げたことで、投資ファンドであるBain CapitalとThe Carlyle GroupがOsram買収を試みる道が開けていた。だが、Osramの最大株主であるAllianz Global Investorsはこれらの投資ファンドとの取引を拒否している。これは、提示された買収金額が見合わなかったためと伝えられている。
Osramが2019年7月末に終了した第3四半期の業績を発表した際、同社はかなり悲観的だった。特に自動車市場が鈍化していることから、「2019年第3四半期にはビジネスが回復する兆しが見えなかった」と述べていた。その結果、同社の売上高は前年同期比14.9%減となる8億5000万ユーロに落ち込んだ。
「買収で収益構造の多様化」を強調
一方、売上高の大半をAppleに依存するamsは、提案した買収によって同社の収益構造の多様化が促進されると述べた。
amsは特に、Osramの買収によってamsの収益構造は実質的に多様化し、「よりバランスが良く、不安定さのない収入とキャッシュフローで構成されるようになる」と述べている。Osramの売上高を合わせて試算すると、売上高のうち35%が民生機器分野、45%が自動車分野になるとしている。
買収により統合される自動車分野の事業では、運転支援システムや自動運転、自動車向けHMI(Human Machine Interface)、自動車用デジタル照明といった、新たな高成長市場で優位に立つことを狙うという。この市場では、自動車生産数の増加ではなく、新機能の市場浸透によって売上高向上が促進される。
また、amsは、買収によって光学ソリューションでの新たなイノベーションの開発が加速する他、製造拠点が拡張され、規模やコスト面でのメリットを得られるようになると述べた。
エミッタや光路、レシーバー、ドライバーICに加え、アルゴリズムやアプリケーションレイヤーソフトウェアを搭載したモジュールに、センサーや光源をパッケージングする傾向はますます強まっている。amsはセンサー、Osramはフォトニクスをそれぞれ専門としているが、Osramのハイパワー赤外線LEDやEEL(端面発光レーザー)が、amsの高性能VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)およびVCSELアレイといったエミッタのポートフォリオを補完するとみられる。
Osramはマレーシアや中国の工場に、amsはシンガポールの工場にそれぞれ投資をしているが、両社の製造ラインへの投資能力を合わせれば、規模とコストのメリットが明確に得られると、amsは説明している。
具体的には、amsは独バイエルン州のレーゲンスブルクの拠点に、LED製造の前工程と開発を全て統合し、地域の雇用の創出と技術開発への継続的な投資を行うつもりだという。また、アジアのLED製造の後工程を統合することも考えており、アジアの製造拠点を最適化し、設備稼働率の向上に取り組むという。
ams、「2020年上期中の買収完了を望む」
amsが2019年5月に初めてOsram買収を試みた際に、デューデリジェンスのアクセス許可を得るための前提条件一部として同年6月に締結された、1年間のスタンドスティル合意があるため、この買収は容易ではない。このスタンドスティル合意が依然として有効なことから、amsは、「Osramがこの合意を放棄することを期待して再び買収の提案を開始した」と述べている。
amsは、Osramが合意を放棄した場合、2020年上期中に買収を完了することを望んでいると、説明している。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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