2段階保護機能を備えた高精度1セル電池残量計IC:「あらゆる要件を満たした」
Maxim Integrated Productsは2019年8月、スマートフォンなど1セルリチウムイオン電池を搭載するモバイル機器向け電池残量計IC「MAX17301/MAX17311」を発表した。
Maxim Integrated Products(以下、Maxim)は2019年8月、スマートフォンなど1セルリチウムイオン電池を搭載するモバイル機器向け電池残量計IC「MAX17301/MAX17311」を発表した。同社モバイル製品事業部でビジネスマネージメントディレクターを務めるBakul Damle氏は「高い残量検出精度はもちろんのこと、高度な電池保護機能やセキュリティ機能を備え、自己消費電流も低い。これからのモバイル機器の電池残量計ICに求められるあらゆる要件を満たした製品」と説明する。
MAX17301/MAX17311は、残量計ICながら、電池保護機能、セキュア認証機能を備える。特に、電池保護機能は「1セル電池残量計ICとしては初めて、2段階の電池保護機能を搭載した」(Damle氏)とし、MAX17301/MAX17311の大きな特長の一つになっている。
2段階の電池保護機能により、電池保護を二重化し安全性を高めることが可能。Damle氏は「電池容量が増え、高度な急速充電技術が用いられる中で、電池保護はより重要性が増している。仮に、1次保護がうまく機能しなくても、2次保護が機能し深刻な障害、事故を防ぐことが可能になる」と述べる。
モバイル機器の安全性を担保するため、非正規電池、偽造電池などの使用を防ぐため電池パックの認証を行うモバイル機器が増えている中で、MAX17301/MAX17311は、SHA-256認証に対応している。
独自アルゴリズムで「競合より平均40%高い精度」
電池残量計ICとして最も重要な残量検出精度は、既に多くの市場実績を持つMaxim独自検知アルゴリズム「ModelGauge m5 EZ」により、「競合製品より平均40%高い精度を誇る」(Damle氏)。同アルゴリズムは、一般的な残量検出方式「クーロンカウンタ」とともに、電圧ベース残量検出方式を組み合わせたもの。充放電量をカウントするクーロンカウンタ方式の時間が経過すると誤差が大きくなるという欠点を、電圧ベース残量検出方式で補い、長期間にわたって、安定的な残量検出精度を実現している。さらに、同アルゴリズムにより「一般的な残量計ICで必要なバッテリ特性評価を行わなくても良い」(Damle氏)というメリットも提供する。
MAX17301/MAX17311は、1.7×2.5mmサイズの15ピンWLPパッケージまたは、3mm角サイズの14ピンTDFNで提供される。また自己消費電流はアクティブモード時24μA。低電力モードおよび、保護用FETオフ時には7μAにまで自己消費電流を低減できるという。Damle氏「最も近い競合製品に比べ、自己消費電流は最大80%低い。長期間保管時の電池消費を極力抑え、エンドユーザーが製品購入した際に電池切れで使えないといったことを防ぐことができる」という。
MAX17301/MAX17311の1000個以上購入時単価は、1.94米ドル。評価キット(MAX17301XEVKIT)の価格は60米ドルとなっている。
【訂正】初出時、MAX17301/MAX17311の1000個以上購入時単価に誤りがありました。お詫びして、訂正致します。(2019年8月29日午前11時56分/編集部)
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