電動化した自動車の種類と構造:福田昭のデバイス通信(201) 2019年度版実装技術ロードマップ(12)(2/2 ページ)
今回から、ロードマップの「モビリティー」のうち「電動化」について紹介していく。まずはハイブリッド自動車と電気自動車、燃料電池自動車の違いと、電動化した自動車の構成要素を取り上げよう。
電動化した自動車の構成要素
電動化した自動車に共通の構成要素は、二次電池(電池)、電動機(モーター)、電力管理ユニット(PCU:Power Control Unit)である。その他の構成要素には、発電機(ジェネレーター)、外部充電器、内燃機関(エンジン)、燃料電池、燃料タンク(ガソリン、軽油、水素のタンク)などがあり、電動化の方式によって構成要素が異なる。
ハイブリッド自動車(HEV)の構成要素には電池、モーター、PCUのほかに、ジェネレーター、エンジン、ガソリンの燃料タンクがある。プラグインハイブリッド自動車(PHV)には、HEVの構成要素に外部充電器が加わる。
二次電池式電気自動車(BEV)の構成要素は電池、モーター、PCUと、外部充電器である。燃料電池式電気自動車(FCV)の構成要素は電池、モーター、PCUのほかに、燃料電池セルと水素の燃料タンクが加わる。
電動化した自動車の構成要素で重要なのが、PCUである。PCUは主にインバーターとDC-DCコンバーターによって構成される。
二次電池の入出力は直流である。これに対してモーターとジェネレーターの入出力は交流である。そこでPCUで交流と直流の変換を実行する。この交直流変換を実行するのがインバーターである。インバーターはモーターを駆動しているときには二次電池の直流電力を交流電力に変換し、モーターの回転数とトルクを制御する。逆に自動車が減速しているときにはモーターをジェネレーターとして利用する。ジェネレーターの出力である交流電力をインバーターが直流電力に変換し、二次電池を充電する。
また二次電池の出力電圧は、モーターの制御電圧よりも低いことが多い。そこでPCUのDC-DCコンバーターで電圧を上げてから直流電力をインバーターに入力する。また補助バッテリーは入力電圧が二次電池の出力電圧よりも低いので、PCUのDC-DCコンバーターで二次電池の出力電圧を下げてやる。
(次回に続く)
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