次世代メモリの本格量産を可能にする新PVD装置:アプライド マテリアルズ
アプライド マテリアルズ ジャパンは、東京都内で記者説明会を行い、MRAM(磁気抵抗メモリ)やReRAM(抵抗変化型メモリ)など新型メモリの量産を可能にするPVD(物理蒸着)装置について、その特長などを紹介した。
MRAMやReRAM、PCRAMの本格量産を可能に
アプライド マテリアルズ ジャパンは2019年9月18日、東京都内で記者説明会を行い、MRAM(磁気抵抗メモリ)やReRAM(抵抗変化型メモリ)など新型メモリの量産を可能にするPVD(物理蒸着)装置について、その特長などを紹介した。
「AI(人工知能)」や「ビッグデータ」「IoT(モノのインターネット)」の時代に向けて、膨大なデータを高速に処理するための新たなコンピュータやメモリ技術が不可欠となってきた。新型メモリとしては、MRAMやReRAM、PCRAM(相変化メモリ)などが期待されている。ただ、これらのメモリには新しい材料が用いられており、本格的な量産を行うには、製造プロセスなど改善すべき課題もあったという。
例えばMRAMは、磁気トンネル接合(MTJ)に必要なメタル層や絶縁層をPVD法で精密に形成する必要がある。特に、その中核となる酸化マグネシウム(MgO)層は、緻密な制御が求められる。高さ方向に原子1個分のばらつきがあっても、デバイスの性能に影響を及ぼすという。
そこでApplied Materialsは、MRAM専用のPVD装置「Endura Clover」を2019年7月に発表した。MgOのスパッタリング用や加熱用、冷却用など最大9個のウエハー処理チャンバーで構成され、各チャンバーは独立して真空状態を維持する。1つのチャンバーで最大5種類の材料について成膜をすることができるという。
MRAMでは、30種にも及ぶ材料層を原子レベルの精度で、均一に成膜をする必要がある。Endura Cloverは、成膜中の膜厚をリアルタイムに測定できる「オンボード計測機能」を搭載している。この機能を活用することで、ウエハーを外気にさらすことなく、均一に成膜を行うことができるため、MRAMの量産ラインでも高い歩留まりと生産性の向上を実現できるという。
PCRAMやReRAM製造向けのPVD装置「Endura Impulse」も同時に発表した。最大9個のプロセスチャンバーとオンボード計測機能を搭載した。真空環境下で複数材料の成膜と膜厚の測定をサブオングストロームレベルの精度で行うことができる。これにより、薄膜が大気に曝されることがなく、パーティクルや不純物による汚染を防止することが可能だという。
アプライド マテリアルズ ジャパンの社長を務める中尾均氏は、「エッジ製品では、消費電力の大きいフラッシュメモリなどに代わり、MRAMのニーズが高まる可能性が高い。クラウド側では、ReRAMとPCRAMが新たなストレージクラスメモリとして実装されそうだ」と話す。これらの新型メモリ技術は、AI/IoT時代を支える有力な技術と位置付けており、「チップの性能と製造コストの折り合いが付けば、今後2〜5年で一定の市場を獲得できるだろう」とみている。
なお、量産ラインに向けたEndura CloverとEndura Impulseは既に、「韓国や台湾、中国など、日本を除くアジア企業から引き合いを得ている」という。
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