ルネサス、米社と物体認識ソリューションを開発:低電力かつ高精度で人や車を検知
ルネサス エレクトロニクスとStradVision(ストラドビジョン)は、ADAS(先進運転支援システム)に向けた車載スマートカメラ用ディープラーニングによる物体認識ソリューションを共同で開発し、2020年初めより供給を始める。
ローエンドの量産車にも対応
ルネサス エレクトロニクスは2019年9月、StradVision(ストラドビジョン)と共同で、ADAS(先進運転支援システム)に向けた車載スマートカメラ用ディープラーニングによる物体認識ソリューションを開発したと発表した。ローエンドの量産車にも搭載可能だという。
StradVisionは、ディープラーニングによる物体認識ソフトウェアを提供している。その特長は歩行者や車両、車線などの認識性能が極めて高いことだ。ルネサスは、車載用SoC「R-Car」などを供給し、量産車などへの搭載で多くの実績を持つ。
両社は今回、StradVision製の物体認識ソフトウェアを、R-Car向けに最適化した。対応するSoCは、ディープラーニング処理用の専用エンジン「CNN-IP」を搭載した「R-Car V3H」と「R-Car V3M」である。CNN-IPを搭載しているため、StradVisionの車載ディープラーニングネットワークである「SVネット」を、少ない電力消費で高速に動作させることが可能だという。
SVネットは、暗所での認識精度や物体が重なり合った状態での認識性能が高い、という特長がある。R-Car V3Hと組み合わせた基本パッケージでは、車両や歩行者、車線の同時認識を、毎秒約25フレームで処理することが可能となった。顧客が標識など認識対象を追加し、機能を拡張する場合には、StradVisionが学習からソフトウェアの作り込みまで、顧客のカスタマイズをサポートする。
R-Car V3HとR-Car V3Mは、CNN-IPに加えて画像認識エンジン「IMP-X5」も搭載している。ディープラーニングによる物体認識と、従来の画像認識を組み合わせることで、認識率をさらに向上させることができる。また、センサー信号の変換処理用ISP(画像センサー信号処理エンジン)を内蔵しており、ISPを搭載していない安価なカメラモジュールでシステムを構成することも可能だという。
開発したスマートカメラ向け物体認識ソリューションについては、R-Car SoCをルネサスが、ソフトウェアと開発サポートをStradVisionが、それぞれ2020年初めより提供する予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 組み込みAIを加速する、ルネサスの新Processing-in-Memory
ルネサス エレクトロニクスは、メモリ回路内でメモリデータの読み出し中に積和演算を行う既存のProcessing-in-Memory(PIM)を改良した、新たなPIM技術を開発したと発表した。同技術をベースに開発したAIアクセラレーターをテストチップに実装して推論処理を行ったところ、8.8TOPS/Wの電力効率を実証したという。 - ルネサス、SOTBプロセス用低電力フラッシュ技術
ルネサス エレクトロニクスは、65nmのSOTB(Silicon On Thin Buried Oxide)プロセスに混載可能なフラッシュメモリの低消費電力化技術を開発した。 - ルネサス、高精度AFEとマイコンを1チップに集積
ルネサス エレクトロニクスは、精度の高いアナログフロントエンド(AFE)部を内蔵した32ビットRXマイコンの第一弾として「RX23E-A」グループを発表した。 - ルネサス、AWSクラウド通信評価キットを発売
ルネサス エレクトロニクスは、アマゾンウェブサービス(AWS)へのWi-Fi接続を容易にする、IoT(モノのインターネット)機器向けクラウド通信評価キット「Renesas RX65N Cloud Kit」を発売する。 - ルネサス、IoT機器に向け64端子マイコンを追加
ルネサス エレクトロニクスは、32ビットマイコン「RX651」グループに、64端子の小型パッケージ品を追加した。小型IoT(モノのインターネット)機器などの用途に向ける。 - ルネサス、最大14セル対応のバッテリー監視用IC
ルネサス エレクトロニクスは、ハイブリッド車や電気自動車における電池寿命と航続距離の最大化に向けて、最大14セル対応のリチウムイオンバッテリー監視用IC「ISL78714」を発売した。