ポストリチウム二次電池の市場拡大は2030年以降に
富士経済は2019年10月、全固体型リチウム二次電池(以下、全固体電池)市場について調査し、2035年には2兆6772億円となる予測を発表した。
今回の調査は、全固体電池4品目の他、ポストリチウム二次電池5品目、次世代電池材料6品目、次世代電池応用製品3品目について行った。これによると、2018年の全固体電池市場は24億円。量産されているのは、海外企業がxEV向けに展開する高分子系全固体電池のみだという。
日本企業が注力する硫化物系全固体電池は、2020年代前半にxEVへの搭載が始まるとみている。xEV以外の用途では、小型の硫化物系全固体電池が2021年ごろからセンサーなどの用途でサンプル出荷が始まると予測する。
酸化物系全固体電池は、バルク型や薄膜型、積層型に加え、微量のイオン液体やポリマーを添加したバルク型疑似固体電池も調査対象とした。バルク型全固体電池は実用化に向けて解決すべき技術課題もあり、xEVなどでの採用は2030年ごろと予想する。回路基板上に実装可能な薄膜型は2013年ごろから製品化されており、ウェアラブル機器やICカード、医療用途で採用が進む。
開発中の錯体水素化物系全固体電池は、2020年代後半より製品化に向けた動きが加速するとみている。
次世代電池として、既に市場が形成されているのは全固体電池のみである。こうした中、ポストリチウム二次電池として最も実用化が近いといわれているのはナトリウムイオン二次電池。これ以外の電池は基礎研究レベルだという。このため、ポストリチウム二次電池市場が本格的に拡大するのは2030年以降とみている。今回の調査では、2035年におけるポストリチウム二次電池の市場規模を268億円と予測した。
今回の調査は2019年5〜7月に実施した。同社専門調査員が対象製品に参入している企業などにヒアリングを行い、関連文献なども参考にしながら予測をまとめた。
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