もはや単なる“メモリベンダー”ではないMicron:AIやセキュリティの製品も(2/2 ページ)
Micron Technologyが2019年10月24日(米国時間)に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催した自社イベント「Micron Insight 2019」は、Micronが単なるメモリベンダーにはとどまらない、という決意が現れたものとなった。
スタートアップ企業買収でAI製品も
さらにMicronは、推論エンジンを手掛ける米国のスタートアップ企業、FWDNXT(フォワードネクスト)を買収し、機械学習開発プラットフォーム「Deep Learning Accelerators(DLA)」シリーズを発表した。DLAはFPGAとMicronのメモリを搭載した評価ボードおよび、SDK(ソフトウェア開発キット)などから構成される。
例えばDLAシリーズの一つ「SB-852」は、XilinxのFPGA「Virtex Ultrascale+」を搭載し、最大512GバイトのDDR4メモリを備えている。FPGAにはFWDNXTの推論エンジンが実装されており、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)、RNN(再帰型ニューラルネットワーク)、LSTM(Long Short Term Memory)といったニューラルネットワークをサポートしている。
フラッシュメモリにセキュリティエレメント機能を統合
IoT(モノのインターネット)のエッジデバイスを保護する、クラウドベースのSaaS(Security as a Service)「Authenta(“オセンタ”のように発音) Key Management Service(以下、Authenta KMS)」も発表した。Micronは、Authenta KMSに対応するフラッシュメモリとして、SE(セキュアエレメント)のような機能を統合したNORおよびNANDフラッシュを用意している。これらのAuthenta KMS対応フラッシュメモリをエッジデバイスに搭載することで、シリコンベースのセキュリティを容易に実現できるとMicronは強調する。
Micron Semiconductor ProductsのEmbedded Business UnitでSegment Marketingのシニアディレクターを務めるAmit Gattani氏は、Authenta KMSを開発した背景について「増加の一途をたどるIoT機器は、サイバー攻撃の新たな標的となり得る。だが、組み込み機器の開発者たちは、この種の攻撃に慣れていない。コンピュータ業界では何年も前から対策が行われてきたが、組み込み業界は違う。それはもちろん、これまで組み込み機器のエンドデバイスはインターネットにつながることがなかったからだ。そのため、組み込み機器向けの優れたセキュリティ技術というのも、なかった。そこでわれわれは、システムの“脳”を担う部分ともいえるメモリにSEのような機能を搭載し、セキュリティのキー管理システムと併せて提供しようと考えた。Authenta KMSによって、組み込み業界のセキュリティに対する意識を変えたい」と語った。
上記のようにメモリ以外の技術や製品の発表も目立ったMicron Insight 2019では、同社が将来を見据え、“メモリベンダー”という立ち位置を超えていきたいという姿勢が強く打ち出されていた。さらにMicronは、次世代不揮発性メモリの研究開発にも余念がない。PIM(Processor In Memory)、SRAM、ReRAM(抵抗変化メモリ)などの研究を並行して行っているという。
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