IoT社会に向けて多様化する電子デバイスパッケージ:福田昭のデバイス通信(212) 2019年度版実装技術ロードマップ(23)(2/2 ページ)
今回から、第3章「電子デバイスパッケージ」の概要を説明していく。「2019年度版 実装技術ロードマップ」で約70ページが割かれている重要な章だ。序章では、年間で1兆個のセンサーが生産される「トリリオンセンサー」について言及している。【訂正あり】
2022年〜2023年には1兆個を超えるセンサーチップを生産へ
序論である「3.1 はじめに」は、第3章を読み進めていくための予備知識を提供する。2019年版では、2017年版のロードマップ(前回の発行)と同様にウエハーレベルとパネルレベルのパッケージに焦点をあて、新たな情報を盛り込んだ。さらに、5G携帯通信システムとミリ波通信システムの実用化に向けたパッケージ技術の記述を拡充している。
この節で注目すべきは、年間で1兆個のセンサーが生産される「トリリオンセンサー」について言及していることだろう。「トリリオンセンサー(Trillion Sensors)」とは2012年〜2013年に米国Fairchild SemiconductorでMEMSおよびセンサー担当バイスプレジデントをつとめていたJanusz Bryzek氏が提唱した概念で、膨大な数のセンサーがネットワーク接続されることで、より良い社会が実現するとの考えに基づく。具体的には20年〜30年後には、45兆個のセンサーがネットワークに接続されることで飢餓や医療不足、水不足、エネルギー不足などの人類社会が抱える重大な問題を解決することを目指す。
Janusz Bryzek氏はその後、Fairchildを退社してトリリオンセンサー社会の実現を推進する団体「TSensors Summit」を立ち上げた。「TSensors Summit」は、年間で1兆個のセンサーが必要となる、あるいは生産される時期を当初は2023年としていた。最近では2022年に前倒ししている。
「2019年度版 実装技術ロードマップ」では、年間に1兆個のセンサーが生産されると仮定し、そのウエハー処理枚数とパッケージ生産数量が月産でどのくらいになるかを計算した。その結果、1個のパッケージに平均で4枚のセンサーダイを内蔵した場合に、月産のウエハー処理枚数は270万枚、パッケージ生産数量は約208億個になると推定した。この生産規模は、ウエハーの処理枚数で現在の最大とされるNANDフラッシュメモリの2倍近いウエハー数になる。またパッケージの生産数量は、DRAMの20倍近い数に達する。このことは、パッケージのコストを極限にまで低くしなければならないことを意味する。
【訂正:2019年11月27日19時30分 掲載当初、「パッケージ生産数量は約21億個になる」「DRAMの2倍近い数に達する」と記載しておりましたが、それぞれ「パッケージ生産数量は約208億個になる」「DRAMの20倍近い数に達する」の誤りです。訂正してお詫び致します。】
(次回に続く)
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