ミニマルファブ、実チップで動作実証にも成功:SEMICON Japan 2019
ミニマルファブ推進機構は、「SEMICON Japan 2019」で、「つながるミニマルファブ」をテーマに、合計で約50台のミニマル生産システム装置群を展示。ミニマルファブで製造し、動作実証に成功した半導体チップも展示した。
テーマは「つながるミニマルファブ」
ミニマルファブ推進機構は、「SEMICON Japan 2019」(2019年12月11〜13日、東京ビッグサイト)で、「つながるミニマルファブ」をテーマに、合計で約50台のミニマル生産システム装置群を展示、会場内の別ブースに設置された装置をタブレット端末でリモート制御するデモなども行った。ミニマルファブで製造し、動作実証に成功した半導体チップも展示した。
ミニマルファブは、直径12.5mmのウエハーを用い、小型の装置で半導体チップを1個ずつ製造することができるシステム。10台のミニマル装置を連結しても、その長さはわずか3mで済む。しかも、局所クリーンルーム化生産システムにより、従来の半導体工場のような大規模な投資や設置スペースはいらない。研究室などにも比較的容易に導入できるというメリットもある。
ミニマルファブの製造装置を用いた半導体チップの開発も本格化する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と産業技術総合研究所(産総研)は、放射線耐性に優れた宇宙機搭載用の集積回路を設計しミニマルファブ方式で試作。48端子セラミックQFPに実装し、正常に動作することを確認したという。
動作確認したのは論理演算などを行う4ビットALU(Arithmetic Logic Unit)チップ。2個の4ビット入力データの加算および、減算を行うことができる。プロセス技術はフルミニマルSOI-CMOS2層アルミ配線を用いた。ゲート長は4μmである。1338個のトランジスタを2×2.5mmのチップサイズに集積している。
JAXAの研究者は、「研究者自らが半導体チップを手軽に製造することができ、試作するまでの期間も短縮できる。多品種少量の用途向けでは、チップコストを従来に比べて2桁抑えることも可能である。さらに、専用回路を開発することでFPGAなどに比べ消費電力を低減することもできる」と、ミニマルファブ活用のメリットを話す。
4ビットALUチップ以外にも、オペアンプやMEMSセンサーなど、ミニマルファブを用いて試作したデバイスを展示した。
ブースでは、ミニマルファブ装置を遠隔操作するデモも行った。具体的には会場内の産総研ブースに設置されたミニマルファブ装置を、離れた場所にあるミニマルファブ推進機構のブースからタブレット端末を用いて遠隔操作した。
今回のテーマでもある『つながるミニマルファブ』とは、「ネットワークを介して製造装置同士が単純につながるだけでなく、遠隔地からでも製造装置の制御やメンテナンス、半導体デバイスの管理などが行える。このように、半導体チップを開発するために、異なる場所や企業間であっても、ヒトやモノが系統的につながる環境を提供する」(説明員)ことだと話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「5G本格化、2020年はさらに多忙に」ソニー、清水氏
ソニーセミコンダクタソリューションズ社長の清水照士氏が2019年12月11日、「SEMICON Japan 2019」(2019年12月11〜13日、東京ビッグサイト)で開催された「半導体エグゼクティブフォーラム」に登壇。2020年の半導体市場の見通しについて、「5Gをベースとした半導体がものすごく忙しくなると思う。われわれも2019年より相当忙しくなるだろう」と述べた。 - 半導体工場を止めるな! 相次ぐ災害に備える「BCP」
「SEMICON Japan 2019」(2019年12月11〜13日、東京ビッグサイト)では今回、初の試みとして、地震や台風といった自然災害などのリスクに対応する「半導体・エレクトロニクス産業のためのBCP(持続継続計画)」エリアを設置。このエリアでは、THKや村田機械などの免振、耐震装置などが紹介されていた。 - 5G、車載SoCテスト製品を強化するアドバンテスト
アドバンテストは、「SEMICON Japan 2019」(2019年12月11〜13日、東京ビッグサイト)に出展。最大70GHzまでのミリ波に対応するRFデバイス/モジュール向け測定ソリューション「V93000 Wave Scale Millimeter」を展示した。同社は、「計測器を使用した高価な高性能実験用設備の性能を、費用対効果の高い汎用ATE装置で実現した」としている。 - 「世界の半導体業界を支える日本」を強調したい SEMI
SEMIジャパンは2019年12月10日、都内で記者発表会を開催し、12月11〜13日にかけて開催される「SEMICON Japan 2019」(東京ビッグサイト)のハイライトと、2020年の半導体市場予測について説明した。 - 半導体業界はぜひ信頼性を高める努力を ―― 5Gオペレーターからの提言
2019年12月11日に開幕する展示会「SEMICON Japan 2019」で、ソフトバンクで最高ネットワーク責任者(以下、CNO)を務める佃英幸氏が講演を行う。半導体業界関係者らが多く来場する展示会で佃氏は何を語るのか――。佃氏にインタビューした。 - ミニマルファブ方式で、宇宙用集積回路を試作
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と産業技術総合研究所(産総研)は、半導体チップの少量生産に適したシステム「ミニマルファブ」を用いて、宇宙機搭載用の集積回路を試作し、その動作実証に成功した。