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高移動度有機半導体を実現する結晶構造制御法開発傾斜型π積層構造の分子を合成

理化学研究所(理研)は、有機分子の構造を精密に設計することで、有機半導体の配列や配向(結晶構造)を有効に制御できることを発見した。傾斜型π積層構造を持つ有機半導体の開発に弾みをつける。

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作製した有機電界効果トランジスタの移動度は4cm2/Vsを超える

 理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発分子機能研究チームのChengyuan Wang(チェギュアン・ワン)特別研究員と瀧宮和男チームリーダーらによる共同研究グループは2020年1月7日、有機分子の構造を精密に設計することで、有機半導体の配列や配向(結晶構造)を有効に制御できることを発見したと発表した。傾斜型π積層構造を持つ有機半導体の開発に弾みをつける。

 キャリア移動度の高い有機半導体の実現に向けて、さまざまな有機分子や高分子材料が開発されている。その多くは個々の分子設計にとどまっていたという。共同研究グループは今回、結晶構造中における分子間相互作用の異方性に着目し、結晶構造の制御が可能かどうかを検証した。

 有機半導体材料の結晶構造の中で、最も高い移動度を示すのが「傾斜型π積層構造」といわれている。「ルブレン」と呼ばれる半導体分子に見られる結晶構造で、分子の積層方向に高い移動度を発現するという。しかし、ルブレン以外の有機半導体分子ではほとんど見ることができない結晶構造でもある。

 共同研究グループは、硫黄原子を含む芳香族炭化水素化合物(チエノアセン)の誘導体が、傾斜型π積層構造を持つことを単結晶X線構造解析によって見いだした。その上で、結晶中では分子の形に依存して、方向により働き方が異なる(異方的に作用する)ファンデルワールス力といった弱い分子間相互作用が、結晶構造に及ぼす影響を検討した。

 この結果、単純構造の置換基であるメチルチオ基(-SMe)を分子の特定位置に導入すれば、分子間相互作用が有効に働く方向を制御できることを発見した。

 設計指針に基づいてπ拡張チエノアセン分子を新たに合成し、ルブレン同様の傾斜型π積層構造であることを実証した。この分子を活性層とした有機電界効果トランジスタを作製したところ、その移動度は4.1cm2/Vsとなった。この値は、同一条件で作製したルブレンの有機電界効果トランジスタにおける移動度とほぼ同じだという。


左上図が開発した新規チエノアセン分子。左下図はチエノアセン分子の傾斜型π積層構造。右図はチエノアセンを用いて作製した電界効果トランジスタの特性図 出典:理研

 共同研究グループは、開発した結晶構造制御法は極めて簡便であり、さまざまな有機半導体骨格に応用することが可能とみている。

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