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電子スピン情報の読み取りに成功:参照用に単一電子スピンを配置
大阪大学らの研究グループは、単一光子から作られる単一電子スピンの計測技術を開発し、電子スピン情報を読み取ることに成功した。
量子情報の単一光スピン検出器として利用も
大阪大学らの研究グループは2019年7月、単一光子から作られる単一電子スピンの計測技術を開発し、電子スピン情報を読み取ることに成功したと発表した。
今回の研究成果は、大阪大学産業科学研究所の藤田高史助教と大岩顕教授、理化学研究所創発物性科学研究センターの樽茶清悟副センター長(当時は東京大学大学院工学系研究科教授)、ルール大学ボーフムのAndreas D.Wieck(アンドレアス ヴィック)教授らによるもの。
単一光子から単一電子スピンへと形態が変わったときに、スピンの情報が正しく交換されて、量子コンピュータなどに利用できるかどうかは、これまで解明されていなかったという。
藤田氏らの研究グループは今回、二重量子ドットに参照用の単一電子スピンを配置した。これによって、光の影響を受けにくい、安定したスピンの読み取りを可能にした。この技術を用いて円偏光照射実験を行ったところ、右円偏光から左円偏光へ光子の状態を変えていったときに、変換後の単一電子スピンが反転する状況を観測することができた。これにより、単一量子間で正しく情報が転写されていることを確認した。
今回開発した技術は、重ね合わせ状態やもつれ状態など量子力学的な情報の変換を始め、長距離量子暗号通信(量子中継)や量子インターネット構築に向けた基本技術の1つとして期待できるという。
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