消費電流200nA、出力電圧が切り替えられる小型DCDC:変換効率は従来比1.6倍向上
トレックス・セミコンダクターは2020年1月15日、超低消費電力で最大出力電流150mAの降圧同期整流DC-DCコンバーター「XC9276シリーズ」を発売したと発表した。従来の低消費電力品よりも自己消費電流を60%抑えた上、動作モードに応じて動作電圧を切り替える昨今のマイコン(MCU)などに対応する出力電圧切り替え機能を備えた。
トレックス・セミコンダクターは2020年1月15日、超低消費電力で最大出力電流150mAの降圧同期整流DC-DCコンバーター「XC9276シリーズ」を発売したと発表した。従来の低消費電力品よりも自己消費電流を60%抑えた上、動作モードに応じて動作電圧を切り替える昨今のマイコン(MCU)などに対応する出力電圧切り替え機能を備えた。バッテリー駆動タイプのIoT(モノのインターネット)端末やウェアラブル機器などの用途に向ける。サンプル価格は、1個300円(税別)になっている。
バッテリー駆動のIoT機器などは、数カ月〜数年といった長期間にわたって電池交換を行わずに動作し続ける必要がある。ウェアラブル端末などでも、1回のバッテリー充電で動作する稼働時間を長くしたいというニーズがある。こうした消費電力の低減ニーズの強いIoT機器、ウェアラブル端末では、非稼働時(スタンバイ時)の消費電力をできるだけ削減しようとする動きが活発になっている。そのスタンバイ時に消費する電力量の一定量を占めるのが、DC-DCコンバーターなどの電源ICの駆動電力であり、「バッテリー駆動のIoT機器やウェアラブル機器では、消費電流がより少ない電源ICが求められている」(トレックス)という。
トレックスでは、こうしたIoT機器、ウェアラブル機器に向けて、低消費電流のDC-DCコンバーター製品を展開。4年前には、消費電流を500nAに抑えた降圧DC-DCコンバーター「XC9265シリーズ」(最大出力電流50mA〜200mA)を製品化している。
今回、発売したXC9276シリーズは、さらに消費電流を抑えた降圧DC-DCコンバーターで、その消費電流はXC9265シリーズより60%少ない200nAにまで低減。「DC-DCコンバーターの動作状況に応じて、一部の内部回路の動作を停止させ、消費電流を抑える技術」(トレックス)を導入したことで、大幅な消費電流の削減を実現したという。消費電流の低減により、軽負荷時の変換効率も大きく改善。5.0V入力、1.8V/10μA出力時の変換効率は75.9%で、従来のXC9265シリーズと比べ1.6倍効率が改善しているという。
また、パッケージサイズも、従来のXC9265シリーズの半分になる1.72×1.07mmサイズ(WLP-6-03パッケージ/高さ0.33mm)を実現した。さらに、従来のXC9265シリーズでは外付けに10μHのコイルが必要だったが、新製品では2.2μHの小型外付けコイルに対応できるように内部回路を改良。その結果、外付け部品を含む電源回路全体を約4割縮小できるとする。
消費電流の抑制、小型化を図ったXC9276シリーズは、新たに出力電圧切り替え機能を搭載した点も大きな特長。IoT機器やウェアラブル端末では、スタンバイ動作時のMCUや無線ICの動作電圧を低くし消費電力を低減する手法の採用が増えつつある。そのため、電源ICも、動作時とスタンバイ時で異なる電圧の電源を供給する必要があり、「出力電圧切り替え機能」が求められつつある。
XC9276シリーズの出力電圧切り替え機能は、VSET端子への入力をHigh/Lowで切り替えることにより、出力電圧が切り替えられる。「電源ICを再起動/リセットすることなく、端子への入力を切り替えるだけで、すぐに出力電圧を変更できる」(トレックス)という。出力電圧は0.6〜3.6Vの範囲で50mVステップで2値、選択できる(出力電圧は工場出荷時に設定)
XC9276シリーズの入力電圧範囲は1.8〜6.0V(最大定格は7.0V)。出力電圧精度は、0.6〜1.0V範囲で±20mV、1.05〜3.6V範囲で±2%となっている。動作温度範囲は−40〜85℃。パッケージは、WLP-6-03の他、2.8×2.9×1.1mmサイズのSOT-26W、2.0×2.0×0.33mmサイズのUSP-8B06がある。
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