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ホログラム市場が再び活発に? まずは車載向けかスコットランドの新興企業

ホログラフィが復活しようとしている。次世代自動車のドライバーや同乗者に向けた商用ヘッドアップディスプレイ(HUD)に使われることになりそうだ。

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 ホログラフィが復活しようとしている。次世代自動車のドライバーや同乗者に向けた商用ヘッドアップディスプレイ(HUD)に使われることになりそうだ。

 デジタルマスタリング技術を強みとするCeres Holographics(以下、Ceres)は、「当社が開発したホログラフィック光学素子(Holographic Optical Elements:HOE)が重要な鍵となって、自動車メーカーやティア1が、1980年代に誰もが夢見たようなHUDを設計開発できるようになるだろう」と主張する。自動車業界は、透明ディスプレイの登場を待ちかねている。ドライバーが注意散漫になって道路から目を離してしまうことがないよう、フロントガラス上にナビ情報を表示することができるディスプレイを必要としているのだ。

 Ceresは、「当社のホログラフィック技術は、湾曲したフロントガラス上に、明るく広い視野で情報を重ねて表示することが可能だ。使用しているプロジェクターパッケージは、既存の他社製品と比べて大幅な小型化を実現している」と主張する。

 同社のCEOであるAndy Travers氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「自動車メーカーはこれまで長年にわたり、オンスクリーン画像を生成すべく、CRTやLEDの他、光導波路を使用した結合器などのさまざまな技術を試してきたが、どれもうまくいかなかった。既存の技術では、プロジェクターパッケージが必要とされるが、そのサイズが大きすぎてダッシュボードに収めることができなかった」と説明する。


ホログラフィックフィルムを掲げるCeres HolographicsのAndy Travers氏

 同社は今後、HOE技術を2段階で展開し、2種類の製品に適用していくという。1つ目の製品は、シンプルなプロジェクタをベースとした「透明ディスプレイ(TD:Transparent Display)」、2つ目は「拡張現実ヘッドアップディスプレイ(AR-HUD)」だ。Travers氏によると、同社はいずれの製品に関しても、自動車メーカーとティア1で既に技術試験を実施しており、一部は最終試験の段階にあるという。2022〜2023年にはTD搭載自動車の製造に着手し、その1年後にはAR-HUD搭載自動車の製造も開始できる見込みだとしている。

 ホログラムは基本的に、2種類の光線によって作り出された干渉パターンを物理的に記録したものである。Travers氏は、「写真に少し似ているといえる」と説明する。

 写真では一般的に、捉えられた物体を2次元的に表現するが、ホログラムは、3次元の光照射野を再生する。

 写真では、画像を記録するためのレンズが必要である。しかし、ホログラフィの光操作では、物体から出る光が直接記録媒体に照射されるため、レンズは不要だ。

 Travers氏は、「この他にもホログラムの重要な側面として、実際に光学機能をキャプチャーできるという点が挙げられる。ホログラムは基本的に、レンズや鏡を使用して作ることができ、極薄のホログラフィックフィルムにその光学機能をキャプチャーすることが可能だ」と述べる。

 この技術は1947年に、ハンガリー系イギリス人で電気工学および物理学の学者であるDennis Gabor氏によって発明され、同氏は1971年にノーベル物理学賞を受賞している。ホログラフィーについて読んで育った多くのエンジニアは、2009年に設立されたスタートアップであるCeresが同技術の成功を主張していることを懐疑的に見ているかもしれない。ホログラフィーが発明から四半世紀近くたっても用途がほとんどない現状を見れば、それも当然だろう。

 しかし、ホログラムは、例えば、武器システムを狙うためのビジュアルフレームとして、戦闘機のヘッドアップディスプレイ(HUD)に使用されている。Travers氏は、「依然として残る問題は、HOEの材料に重クロム酸ゼラチンが使われていることだ。毒性が非常に強いため、量産される民生製品には同材料を使用できない」と述べている。

 ホログラム技術の革新において、Ceresの差異化ポイントの1つは、非毒性のホログラフィックフィルム材料を最適化する技術についてノウハウを持っていることである。

 Ceresが開発したHOEは、その多くに2000年にBell LabsからスピンアウトしたInPhase Technologies(以下、InPhase)が開発した新しい非毒性フォトポリマーフィルム材料を利用している。InPhaseは、ホログラフィックデータストレージソリューションの開発を手掛ける企業だ。

 InPhaseの光ポリマー化学事業は、ドイツのBayer Material Science(現Covestro)に買収され、Bayerは「Bayfol HX」と呼ばれる材料を開発した。CeresとBayfol HXを結び付けたのは、Ceresの創設者でCTO(最高技術責任者)を務める Ian Redmond氏だ。同氏はInPhaseで数年間、ホログラフィック開発をリードし、高性能フォトポリマー媒体に関する知見を得た。

 Redmond氏がInPhaseで学んだ基本的な技術は、後に同氏が米国からスコットランドに戻ってCeresを立ち上げる際の基盤となった。

【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

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