ニュース
液晶で実現、実用的な電子ホログラフィ立体表示:光ナノプリント法で隔壁を作製
東北大学は、視域角(回析光)が広く実用的な電子ホログラフィ立体表示を可能とする液晶基盤技術を開発した。
自然で疲労感のない空間像を再生
東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の藤掛英夫教授と博士課程後期3年の磯前慶友氏らによる研究グループは2019年5月、視域角(回析光)が30度と広く、実用的な電子ホログラフィ立体表示を可能とする液晶基盤技術を開発したと発表した。
液晶ディスプレイを応用して、視域角が広い電子ホログラフィ立体表示を実現するには、画素サイズ1μmピッチの光変調素子が必要になる。同時に、厚い液晶層を構成することで十分な光位相の変化幅(360度)を確保しなければならない。ところが、厚い液晶層を狭ピッチにすると、画素間の電界漏れなどにより、隣接する複数画素が同時に駆動されることもあったという。
そこで研究グループは、各画素を個別に駆動させるため、隔壁の素材と構造を検討した。今回は、光ナノプリント法を用い、画素間に樹脂の隔壁を高い精度で形成した。しかも、画素内には微小な間仕切りを挿入し、液晶領域を長方形とする新たな液晶素子構造を開発した。これにより、従来の正方形であった時に比べて、液晶の分子配列が均一となり、極めて高い解像度の画素駆動を可能にした。なお、画素の隔壁作製には大日本印刷の協力を得た。
液晶ディスプレイを応用した電子ホログラフィ技術は、自然で疲労感のない裸眼立体表示や拡張現実、仮想現実などを可能とする。これにより、臨場感あふれる映像サービスや医療診断支援、工業製品のデザイン、車載用ヘッドアップディスプレイなどへの応用に期待する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 東北大学、高性能で低電力の不揮発マイコン開発
東北大学は、エナジーハーベスティング(バッテリーフリー)で駆動可能な不揮発マイコンを開発した。 - 東北大学、室温でリチウム超イオン伝導を実現
東北大学の研究グループは、リチウムイオンが高速で伝導する新たなリチウム超イオン伝導材料を開発した。 - 東北大学、FeSn薄膜で柔軟なホール素子を実現
東北大学金属材料研究所は、鉄スズ(FeSn)磁石の微結晶薄膜を室温で作製し、これがフレキシブルな磁気センサー(ホール素子)として利用できることを実証した。 - 東北大ら、周波数(色)の「量子もつれ」を発生
東北大学と電気通信大学の研究グループは、周波数(色)の「量子もつれ」を有する光子を直接発生させる技術を開発した。光の周波数を用いた大容量量子情報処理システムの実現に重要な役割を果たすとみられる。 - 東北大ら、高温・大気中で安定な混合導電体開発
東北大学は、米国マサチューセッツ工科大学との国際共同研究により、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の高性能化や低温作動を可能にする「n型混合導電体」を開発した。 - 東北大学ら、新構造の回転角度センサーを開発
東北大学大学院工学研究科の中村健二教授と松尾製作所らの研究グループは、新構造の駆動モーター用回転角度センサーを開発した。次世代のZEV(Zero Emission Vehicle)などに向けたもので、主要構成部材である電磁鋼板の使用量を大幅に節減することで、車両の軽量化を可能とした。