自動車用センサーの技術動向(前編):福田昭のデバイス通信(237) 2019年度版実装技術ロードマップ(47)(2/2 ページ)
今回から、自動車におけるセンサーの技術動向を前後編に分けて紹介する。前編では、対象物をリアルタイムで認識するカメラと、定速走行・車間距離制御を支えるミリ波レーダーについて解説する。
対象物をリアルタイムで認識するセンシングカメラ
ここからは「カメラ」について説明していこう。カメラには大別すると「ビューカメラ」と「センシングカメラ」がある。ビューカメラは車両の周囲を撮影して運転者に画像を見やすく表示する。駐車支援や白線検知などで使われる。
「センシングカメラ」は、撮影画像から対象物を認識して運転者に警告を発したり、車両を適切に制御したりする。認識対象には車両、白線、交通標識、歩行者、障害物などがある。センシングカメラには単眼カメラとステレオカメラ(2個のカメラを組み合わせたユニット)があり、いずれも対象物との距離を測定する。
センシングカメラでは、撮影画像の認識機能が極めて重要である。雨天や夜間などの異なる環境で、さらにはトンネルの出入り口といった急激に明暗が変化する状況で、リアルタイムで対象物を認識しなければならない。このため機械学習が不可欠の要素技術となっている。
定速走行・車間距離制御を支えるミリ波レーダー
続いて「ミリ波レーダー」と「準ミリ波レーダー」を解説しよう。まず「ミリ波レーダー」は76GHz帯あるいは79GHz帯の電磁波を使う。
76GHz帯のミリ波レーダーは、遠距離に位置する物体(主に前方車両)を検知するために使われる。取り付け場所は車両のフロントグリルが多い。具体的な用途は「定速走行・車間距離制御(ACC)」だ。レーザーの帯域幅は1GHzであり、分解能はあまり高くない。79GHz帯のミリ波レーダーは、近距離(車両周辺)の物体を検知するために使われる。帯域幅は4GHzと広く、76GHz帯のレーダーに比べると分解能が高い。
さらに次世代のミリ波レーダーとして、140GHz帯と高い周波数帯の電磁波を使うレーダーが開発されつつある。帯域幅は136GHz〜148.5GHzの12.5GHz幅とかなり広い。このため、79GHz帯のレーダーよりも分解能がさらに高くなる。
次は「準ミリ波レーダー」を簡単に説明する。準ミリ波レーダーは24GHz帯の電磁波を使う。車両周辺の物体検知に使われる。取り付け場所はバンパーの角部である。運転者にとって死角となる斜め前方と斜め後方の物体(主に歩行者と接近車両)を検知する。
ミリ波レーダーと準ミリ波レーダーの距離測定には、連続波を使う「周波数変調連続波(FMCW:Frequency Modulation Continuous Wave)」方式が主に利用される。また最近ではパルス波を使う「パルスエコー(ToF:Time of Flight)」方式の開発が進んでいる。
(次回に続く)
⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 次世代コンデンサの主役を狙うシリコンキャパシタ
今回は、次世代のコンデンサである「シリコンキャパシタ(シリコンコンデンサ)」を解説する。 - ありとあらゆる電子機器にコンデンサが使われる
第4章「電子部品」からコンデンサについて解説する。コンデンサの構造や働き、種類を説明しよう。 - 電源回路の進化を支えるインダクタ
今回は、第4章「電子部品」からインダクタについて説明する。インダクタの構造の他、電源用インダクタの用途と特性を紹介する。 - 折り畳み、5G、1億画素…… 新たな挑戦を続けるGalaxy最新モデルを解剖
今回は、Samsung Electronicsの2020年モデルスマートフォン2機種を取り上げる。1つは、縦方向にディスプレイを折り畳める「Galaxy Flip」。もう1つは、第5世代移動通信(5G)に対応し、1億800万画素カメラを搭載する「Galaxy S20 Ultra 5G」だ。 - 金属らせん磁性体で、らせんの巻く向きを制御
東京大学と東北大学の研究グループは、金属らせん磁性体におけるらせんの巻く向きを、電流と磁場を用いて制御することに成功した。磁気メモリなどへの応用が期待される。