広帯域で高い量子ノイズ圧縮率の量子光源を開発:光量子コンピュータチップ実現へ
NTTは東京大学と共同で、テラヘルツの広帯域と75%以上の高い圧縮率を実現した量子光源(スクィーズド光源)を共同で開発した。室温で動作可能な汎用の光量子コンピュータチップなどの用途に向ける。
量子ノイズ圧縮率は75%以上、帯域は2THz以上
NTTは2020年3月、テラヘルツの広帯域と75%以上の高い圧縮率を実現した量子光源(スクィーズド光源)を、東京大学と共同で開発したと発表した。室温で動作可能な汎用の光量子コンピュータチップなどの用途に向ける。
大規模な汎用量子計算を実現するため、一方向量子計算という手法を用いた光量子コンピュータなどが注目されている。量子もつれを作るには、非線形光学効果によって生成可能なスクィーズド光を用いる。しかし、これまで用いられてきた共振器構造だと、高い量子ノイズ圧縮率は実現できるが、構造上の問題により帯域は数GHzに制限されていた。
一方、帯域が広いスクィーズド光源の実現に向けて、共振器構造を用いない単回通過による光変換方式などもいくつか提案されている。主なものとして、「励起光にピークパワーの大きな超短パルスを用いる手法」や「非線形光学導波路を用いる手法」がある。ただ、前者は、「遅延線の短縮やクロック周波数の向上につながらない」。後者は、「非線形光学材料の加工が難しく、性能の良い導波路が得られないため、量子ノイズ圧縮率は35%程度」といった課題があるという。
NTTは、これまで研究してきた非線形光学デバイス(周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路)を用いて、量子ノイズ圧縮率75%を達成した。試作した光源から、2THz以上のスクィーズド光が生成されていることも確認した。なお、スクィーズド光の測定には、東京大学が有する高精度の光制御・受光技術を用いたという。
従来の1000倍となる「テラヘルツ」帯域のスクィーズド光を実現したことにより、飛行する光量子ビットの長さを300μm以下に短縮でき、光チップ内での操作を可能とした。同時に、光量子コンピュータ自身のクロック周波数を高めることで、より高速な量子計算を可能にした。今回実現した高いノイズ圧縮率は、大規模な量子もつれ状態の生成にも十分に適用できる性能だという。
NTTは今後、広帯域のスクィーズド光を活用して、これまで以上の大規模量子もつれ状態の生成および、汎用量子コンピュータの実現に向けた各種光量子操作を実証していく。また、小型の光チップ上で光量子コンピュータを実現するための技術開発にも取り組む予定である。
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