公衆網から自営網への切り替えを5秒以下に短縮:ローカル5Gにも適用可能
情報通信研究機構(NICT)と東日本旅客鉄道(JR東日本)、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は、列車に設置した端末を用いて無線ネットワークを公衆網から自営網に切り替える実験を行い、平均5秒以下で切り替え可能なことを実証した。
NICT、JR東日本、鉄道総研が実証実験
情報通信研究機構(NICT)は2020年4月、東日本旅客鉄道(JR東日本)、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)と連携し、列車に設置した端末を用いて無線ネットワークを公衆網から自営網に切り替える実験を行い、平均5秒以下で切り替え可能なことを実証した。
今回の実験は、通信事業者が提供している一般的な公衆網と接続された端末が、列車や自動車で移動中に、自営網事業者が設置する自営スポットセルの圏内に入ったとき、切り替えがスムーズに行えるかどうかを検証した。
実験に用いたワイヤレス基盤技術はNICTが開発した。具体的には、JR東日本の烏山線(栃木県)の宝積寺駅〜下野花岡駅間に、親局となるベースバンド装置(BBU)1台と、無線信号の送受信処理を行う無線機(RRH)3台を設置し、総長3kmの自営リニアスポットセルを仮設した。
実験では32GHz帯の電波を用い、烏山線を走行するACCUM(蓄電池駆動電車)車両内に設置した端末と基地局の間で送受信し、リニアスポットセル突入時に自営網への接続切り替えと、接続先である3台のRRHをシームレスに切り替える接続実験を行った。実験期間は2019年12月4日から2020年2月6日まで。
公衆網などを経由して、事前に自営網へ一度アクセスしておけば、端末がスポットセル圏内に入った時のセルサーチや認証手続きのような接続処理を大幅に短縮でき、自営網と公衆網の事業者間で利用者の加入者情報を共有することなく、スムーズな切り替えが可能だという。
実際に、自営リニアスポットセル圏内に入って接続するまでの切り替え時間は平均5秒以下、最大でも約10秒に短縮できることを確認した。従来方法だと、接続切り替えに4分以上も要していたという。
複数台のカメラを地上に設置し、撮影した映像を端末に伝送する動画伝送実験も行った。この結果、往復遅延時間(ラウンドトリップタイム)は、公衆網で接続した時の約800ミリ秒に対し、自営網では約100ミリ秒となり、約8分の1に短縮された。
開発した技術は、ローカル5Gにも適用可能なことから、農業や交通インフラ、防災システムなどへの応用が期待できるという。
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