三菱電機、薄型のKa帯対応航空機用AESA技術を開発:中小型旅客機への搭載を可能に
三菱電機は、厚みが3cm以下という薄型で、Ka帯に対応する航空機用電子走査アレイアンテナ(AESA)技術を、情報通信研究機構(NICT)と共同で開発した。
ミリ波帯向けのアンテナ素子や高周波集積回路も開発
三菱電機は2020年2月、厚みが3cm以下という薄型で、Ka帯(周波数27G〜40GHz)に対応する航空機用電子走査アレイアンテナ(AESA)技術を、情報通信研究機構(NICT)と共同で開発したと発表した。NICTが開発したアンテナ素子と、三菱電機が開発した高周波集積回路を1枚の基板に実装することで実現した。これとは別に、東北大学などと共同で、ミリ波帯(周波数40G〜75GHz)に対応したAESA技術も開発した。
近年は、複数の人工衛星を活用し、全世界でインターネットサービスを提供する「低軌道通信衛星コンステレーション」などが注目されている。既に、Ku帯(12G〜18GHz)を利用した衛星通信サービスに加え、より大容量で高速通信を可能にするKa帯を用いたサービスも始まった。これにより、飛行中の旅客機内で100Mビット/秒を超える大容量/高速通信が可能となる。
ところが、飛行中の旅客機で衛星通信を利用する場合、機体に取り付ける衛星通信用アンテナは、アンテナ可動域と駆動機構を備えた方式が主流となっていて、中小型の旅客機に搭載することが難しかったという。そこで、三菱電機は小型で薄型のアンテナ開発に取り組んだ。
今回開発したKa帯に対応するAESA技術は、NICTが開発したアンテナ素子と、三菱電機が開発した高周波分配/合成回路および、高周波集積回路を、1枚のプリント基板上に一体形成した。これにより、AESAの厚みを3cm以下に抑えられたという。
開発したKa帯高周波集積回路には、SiGe技術を用いることで電力付加効率を29.1%(同社従来製品比1.8倍)に高めた高出力増幅器と、雑音指数が1.8dB(従来製品比80%)の低雑音増幅器を搭載している。
さらに三菱電機は、東北大学や東北マイクロテックと共同で、シリコン貫通電極技術を用いて、複数の高周波集積回路を積層した「ミリ波帯3次元実装高周波集積回路」を開発した。
三菱電機は独自でミリ波帯中空構造アンテナ素子も開発している。プリント基板内に空洞を設けた構造で、ミリ波においても良好な円偏波特性と電力効率であることを確認している。仰角20度の方向にビーム走査しても高いアンテナ特性を維持できるという。
三菱電機は今後、通信試験等の実証実験を行い、Ka帯AESAは2023年以降、ミリ波帯AESAは2027年以降の製品化に向けて開発していく予定である。
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