復刻版ゲーム機でたどる半導体30年の進化:製品分解で探るアジアの新トレンド(46)(4/4 ページ)
ここ4〜5年で、家庭用ゲーム機の復刻版が次々と発売されている。分解してチップを比べると、半導体が30年で遂げてきた進化が見える。
クラシックミニとCore Grafx mini、プロセッサは「同じ」
図8は、2016年発売のクラシックミニ ファミコンと2020年発売のCore Grafx miniそれぞれで採用されているプロセッサの解析の様子である。任天堂は、中国Allwinner Technology の汎用プロセッサ(非常に多くの採用事例のあるチップである)「R16」を採用。Core Grafx miniは瑞起のZ7213である。
しかし、両チップは開封解析によって、まったく同じものであることが判明した。弊社ではさらに拡大した写真を重ね合わせ差分分析なども行い、内部の一致をさらに行っている。R16=Z7213であることは間違いないだろう。パッケージは別々、中身は同じシリコンということは半導体ICの世界では非常に多いので、驚くことではない。大手メーカーでも使っている手法の1つである。
2017年に発売されたニンテンドークラシックミニ スーパーファミコンでもAllwinner TechnologyのR16を使っているので、R16ベースのZ7213まで加え、復刻ゲーム機の多くはR16の器に収まったというわけである。
図9はPCエンジン、「PCエンジンコアグラフィックス」(1989年発売)「同II」(1991年発売)および復刻版のCore Grafx miniを並べた様子と、基板を取り出し、ハドソンのチップセットを並べたものである。
日本製チップが消えたCore Grafx mini
図10は、PCエンジンコアグラフィックスとCore Grafx miniの全チップ開封を行い、パッケージの上に配置したものである(実際のチップ面積には合わせていない)。オリジナルは全て日本製チップであったが、復刻版では日本製チップはゼロ。代わって中国、台湾、韓国のチップで構成されている。
オリジナルから復刻版で周波数は約168倍、DRAM容量は4000倍に増え、CPU個数とビット数の増加を計算すると16倍となっている。30年の歳月をへた半導体メーカーの遷移や性能の進化など、多くを実感できることだろう。
コロナ禍にあって先行き不透明な2020年だが、次の10年(2030に向けて)のスタートとなる年でもある。次の10年を経て上記の数字がどのように変化していくのだろうか。今後も、分解と解析に基づくエビデンスベースで継続的に観察し、まとめていくことをあらためて決意した次第である。
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