人の動きで発電、抗菌性能を発揮する繊維を開発:村田と帝人フロンティアがJV設立(2/2 ページ)
村田製作所と帝人フロンティアは、2020年6月4日、人が動く力を電気エネルギーに変換し抗菌性能を発揮する圧電繊維「PIECLEX(ピエクレックス)」を開発したと発表した。両社は、PIECLEXの研究開発および製造、販売を行うジョイントベンチャー「PIECLEX」を設立。抗菌以外の機能開発も進め、2025年度に売上高100億円を目指す。
ジョイントベンチャーを設立、『電気の繊維』の新しい性能開発も
村田製作所と帝人フロンティアは、このPECLEXの研究開発および製造、販売を行うジョイントベンチャー「PIECLEX」を2020年4月1日付で設立した。合弁会社設立について、同社社長、玉倉大次氏は、「両社の強みが、それぞれの弱みを全て補完できている。開発者、責任者が出し惜しみすることなく両社の技術、経験を持ち寄り、すでに多くのメリットが出ている」と説明する。
PIECLEXでは、帝人フロンティアの繊維に関する知見と、村田製作所の電子材料に関する開発力および評価、シミュレーション技術を生かした製品開発を実施。そのうえで、帝人フロンティアの国内外の幅広い販売網とブランド力を強みとして製品展開を進めていくという。なお、PIECLEXはファブレス企業として活動し、製造は帝人フロンティアのラインを活用する方針だ。また、製品価格については、「当面は既存の石油由来繊維より高くなると思うが、将来的に量産可能となれば、差異のない価格で提供できるだろう」としている。
事業計画としては、2020年度は、「抗菌剤を使用しない抗菌繊維」としてのPIECLEXを第1弾として、スポーツウェアやインナーウェアなど国内アパレル市場向けに展開。同時にマスクなどの衛生用途についても研究を続けていく方針だ。
中長期的には、海外アパレル市場への拡大や、産業資材やヘルスケア分野にも範囲を拡大するほか、抗菌性能以外に活用できる新たなPIECLEXシリーズの開発を進めていく方針で、2025年度の売上高目標として100億円を掲げている。
PIECLEXの資本金は1億円。出資比率は村田製作所が51%、帝人フロンティアが49%。所在地は、滋賀県野洲市の村田製作所野洲事業所内だ。製品名と社名を同一とした理由については、玉倉氏は、「電気の繊維といえば『PIECLEX』と早く、深く根付いていく形で統一した」と述べている。
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