パワー半導体市場、2030年に4兆円超の規模へ:富士経済が調査結果を発表
富士経済は、世界のパワー半導体市場を調査し、2030年までの市場予測を発表した。これによると、2019年の2兆9141億円に対し、2030年は4兆2652億円に達すると予測した。
中国市場は2019年に1兆円超え
富士経済は2020年6月、世界のパワー半導体市場を調査し、2030年までの市場予測を発表した。これによると、2019年の2兆9141億円に対し、2030年は4兆2652億円に達すると予測した。
今回の調査は、パワー半導体の市場動向や技術開発の動向、パワー半導体を構成する部材や製造に必要な装置の市場動向などを把握するため実施した。調査対象としたのはSi(シリコン)パワー半導体および、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)、酸化ガリウム系などの材料を用いた次世代パワー半導体である。調査期間は2019年11月〜2020年2月。
パワー半導体市場は、中国の景気後退などもあって、2019年は前年に比べ微減となった。2020年以降は、自動車/電装分野と鉄道車両分野向けを中心に需要が拡大すると予測。産業分野向けでも需要の回復に期待する。将来的に次世代パワー半導体への期待が高まるものの、現状ではSiパワー半導体の構成比率が98%以上を占め、今後もこの優位性は変わらないとみている。
2019年における地域別市場は、中国が最大需要地となっており、その規模は1兆円を超えるという。今後も中国がパワー半導体市場をけん引するとみられる。中国に続くのが台湾や東南アジアなどの他アジア市場で、2019年は6694億円となった。日本や欧州、北米の市場はそれぞれ、3000億円から4000億円の規模である。
パワー半導体構成部品の市場規模は、2019年の2260億円に対し、2030年は4721億円と予測した。また、パワー半導体製造装置の市場規模は2019年の1656億円に対して、2030年には3293億円まで拡大する見通し。
次世代パワー半導体、自動車/電装分野を中心に市場拡大
自動車/電装分野を中心に、情報通信分野や産業分野において、需要拡大を期待しているのが次世代パワー半導体である。ここでは、SiCやGaN、酸化ガリウム系の材料を用いたパワー半導体に注目し、調査結果を公表した。
SiCパワー半導体は2019年の436億円に対し、2030年は2009億円の市場規模と予測した。2019年は自動車/電装分野向けの構成比率が36.0%を占めた。2018年よりSiC-FETの本格採用が始まった。2022年よりEVの駆動用インバーターモジュールにSiCパワーモジュールが採用される見通しから、自動車/電装分野向け比率はさらに高まり、2025年には40%を超えるとみている。
GaNパワー半導体の市場規模は、2019年の19億円に対し、2030年は232億円と予想した。サーバ電源など情報通信機器向け比率が80%台に達している。今後は、自動車/電装分野などへの用途拡大が期待されている。開発が進む縦型構造のGaNパワー半導体の動向が注目されている。
酸化ガリウムパワー半導体は、2025年以降に市場が本格的に立ち上がるとみられ、2030年に590億円の市場規模と予測した。当面のターゲットは中耐圧で600Vクラスの電源向けを想定している。その後は高耐圧領域にも広がる見通し。SiC/GaNパワー半導体に比べて、コスト面での優位性が強みとなる。
なお、調査結果の詳細は、「2020年版次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」としてまとめ、販売している。
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