GF、米国防総省との連携深める:製造業の国内回帰を促す
GLOBALFOUNDRIESは、米国が半導体供給ラインの再構築を目指していく中で、米国防総省にとって信頼できるメーカーとしての位置付けを確保しようとしている。同社は、「複数の製造元を確保しながら、耐放射線チップなどの主要コンポーネントの製造を拡大することが可能だ」と主張する。
GLOBALFOUNDRIESは、米国が半導体供給ラインの再構築を目指していく中で、米国防総省にとって信頼できるメーカーとしての位置付けを確保しようとしている。同社は、「複数の製造元を確保しながら、耐放射線チップなどの主要コンポーネントの製造を拡大することが可能だ」と主張する。
「ムーアの法則」が失速しつつある中、GLOBALFOUNDRIESは、微細化のみではなくチップ統合技術によって、高効率化の実現を目指している。
米国が、Huaweiに対する輸出規制を強化し、中国との間で貿易戦争が激化したことにより、GLOBALFOUNDRIESとそのライバルであるTSMCにとって、新たな扉が開かれた。米国政府が、Huaweiとその半導体部門であるHiSiliconに対して、最先端の半導体製造装置へのアクセスを遮断するための方法を模索する中、米国の貿易担当当局は、TSMCが米国アリゾナ州での工場建設計画を実現できるかどうかを見守る考えのようだ。
このアリゾナ工場の建設が実現すれば、国防総省は、最先端の半導体技術へのアクセスを失うのではないかという懸念を緩和することができる。
GLOBALFOUNDRIESはこれまで長年にわたり、米軍のサプライヤーとしての役割を担ってきた。
同社は2020年5月に、ニューヨーク州マルタにある最先端の製造工場「Fab 8」において、米国の輸出規制に対応するための計画を発表している。130億米ドルを投じて同工場を拡張することにより、国際武器取引規則(ITAR:International Traffic in Arms Regulations)および米輸出管理規則(EAR:Export Administration Regulations)への準拠を目指すという。最終的には、12nm FinFETプロセス技術でも高い安全性を実現したいとしている。
GLOBALFOUNDRIESで航空宇宙/防衛部門担当ゼネラルマネジャーを務めるMike Hogan氏は、「実行可能な準備体勢が整っていることを明示できるようにしたい」と述べる。
同社は2020年5月に、中国四川省成都市のウエハー工場を閉鎖している。
この他にも、同社は最近、米国の専業ファウンドリーであるSkyWater Technology(以下、Skywater)との協業を発表しており、米国の半導体製造に対する政府投資を獲得するための競争に参加することが可能になった。同社の工場向け設備投資費は、2024年までに約470億米ドルに達する見込みだという。
Hogan氏はインタビューの中で、「SkyWaterの90nmプロセスによる対放射線技術と、GLOBALFOUNDRIESのバックエンドプロセス技術は、出発点としての機能を十分に果たすことが可能だ。この2つの技術を組み合わせることにより、ジョイントIP(Intellectual Property)をベースとしたさらなる技術開発の実現や、潜在的なマルチソーシングの拡大によるメリットの実現に向けて、土台を築くことができる。これらは全て、現在国防総省が進めていることに大いに関係している」と述べている。
両社の協業により、SkyWaterのファウンドリーサービスモデルは、ITARに準拠可能なレベルまで適度に推進されることになるだろう。
SkyWaterとのパートナーシップには、クロスライセンス条項の他、テストやアセンブリ、高度なICパッケージングなどを含む、さまざまなプロジェクトが含まれているという。
このため、GLOBALFOUNDRIESは、国防総省向けチップ技術の要件は、高価な次世代プロセスノードへの移行よりも、コンポーネントの統合によって満たすことができると主張する。
Hogan氏は「半導体の需要が多様化するにつれ、並外れて大口の顧客の数はどんどん減っている」と述べる。
GLOBALFOUNDRIESは、バッテリー管理、RF IC、マイコン、メモリを組み合わせることが、“より説得力のある”アプローチになると考えている。いずれは「Packaging-as-a-Service」のような、新たな機能が生まれる可能性もあり、「高価な最先端プロセスノードよりも、米国の半導体製造を押し上げる原動力になり得る」とHogan氏は付け加えた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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